art × social × blog

日常のこと、スポーツやアートのこと、仕事のこと

仕事終わりにオペラ観劇……但し映画館で……

ライブっていいですよね。
私の場合、ライブというと主に演劇の公演になるわけですが、劇場の中で舞台上の世界と一体になる感覚は、生きるための活力となり、クリエイティブな感性に刺激を与えてくれる非常に貴重なものです。

できるだけ「これ」と思った公演には足を運ぼうと思っていますが、通常の演劇で7000〜8000円、オペラだと10000円以上、海外のオペラ公演だと20000〜30000円と相応にコストもかかりますし、人気の公演はチケットが取れないこともしばしばです。そもそも海外のオペラ座の公演などはそうそう東京に来るわけでもありませんし、気軽に楽しむには少しハードルの高い趣味とも言えます。

昨年はミラノのスカラ座、ロンドンのナショナルシアターと、現地で生の公演を観に行くことが出来ましたが、特にナショナルシアターの公演は素晴らしく、できることなら何度でも現地に行って観劇したいと真剣に思えるくらいの大きな感動がありました。
もちろんロンドンに行くには時間もコストもかかりますし、そんなに気軽に本場の舞台を観に行けるものではないですよね。。

そんな中、最近よく出かけるのが映画館での演劇やオペラの上映です。

前述のロンドン・ナショナルシアターの上映もありますし、オペラだとこちらもロンドンのロイヤルオペラや、ニューヨークのMET(メトロポリタンオペラハウス)は毎年のシーズンに合わせて全世界で上映されています。

今年に入ってから観に行ったタイトルを以下に挙げます。

ブラナー・シアター・ライブ

いずれもケネス・ブラナー演出による、シェイクスピアの「冬物語」「ロミオとジュリエット」、ジョン・オズボーンの「エンターテイナー」の3作品が上映されましたが、私はジュディ・デンチ出演の「冬物語」を観に行きました。
ケネス・ブラナージュディ・デンチの迫真の演技は言わずもがなの素晴らしさですが、個人的には舞台転換の妙(実に考えつくされた装置とすばやい転換は驚きでした)が印象に残った作品でした。

「英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン」公式サイト

ロンドンのロイヤルオペラハウスの2016/17シーズンは6本のオペラと6本のバレエの上映です。
その中で今回観に行ったのは、オッフェンバックのオペラ「ホフマン物語」とヴェルディのオペラ「イル・トロヴァトーレ」の2本。

圧倒的な美術と壮大な演出に酔った「ホフマン物語
昨年行ったロンドンはこの「ホフマン物語」の公演がスタートする直前で、今更ながら生で観れなかったのが本当に悔しい……(私よりも1週間長く滞在した妻はしっかりコヴェントガーデンで公演を観ていて羨ましいかぎり……)

イル・トロヴァトーレ」はアズチェーナを演じた、アニタ・ラチヴェリシュヴィリの傑出した演技が今でも鮮明に記憶に焼き付いています。個人的に「イル・トロヴァトーレ」という作品を今ひとつ理解できなかったのですが、今回のアニタ・ラチヴェリシュヴィリのアズチェーナによって、作品世界が一気に理解できたような気がします。アズチェーナの複雑な心情と運命が完璧に表現されていた凄まじい演技でした。


今シーズンはまだ観に行けていませんが、METのライブビューイングも気になります。
ダムラウ、グリゴーロ出演の「ロメオとジュリエット」を見逃してしまったのは不覚でしたが(この上映も妻はしっかり観に行っていて凄い)、6月のルネ・フレミング出演の「ばらの騎士」は見逃せません。
METライブビューイング:オペラ | 松竹

今年のラインナップはまだ公開されていませんが、ロンドン・ナショナルシアターのライブも楽しみです。
昨年のベネディクト・カンバーバッチ主演の「ハムレット」は衝撃でした。この「ハムレット」を観たからこそ、昨年のロンドン旅行では是が非でもナショナルシアターで生の公演を観たいと思ったのでした。
実際に現地で観たのは「アマデウス」でしたが、映画版とはまた違った鮮明な迫力とメッセージ性が強く印象に残っています。
昨年亡くなられた本作の作者ピーター・シェーファーの偉大さをあらためて実感した素晴らしいプロダクションでした。
www.ntlive.jp

世界屈指の舞台を映像上映とはいえ、劇場で楽しめるのはありがたいですね。
ロンドンやニューヨークに行かずともカジュアルに楽しめるのは大きな価値かと思います。
もちろん現地で生の公演を観る価値はかけがえのないものではありますが、こうした上映からも少なからず活力や刺激を得ることが出来ます。
仕事終わりにオペラ観劇。
日常のアクセントとして、これからも楽しみたいと思います。

f:id:matsu_nao:20170323003912j:plain:w450

ステラ・マッカートニー@表参道:陰影のファサードデザイン

職場が表参道の片隅にあることもあって、表参道界隈の多彩な建築をいつも日常的に目にしています。
haveagood.holiday


中でも個人的に一番好きなのがタイトルにも挙げた、ステラ・マッカートニーの旗艦店の建物です。

f:id:matsu_nao:20160511135213j:plain

印象的なのは幾何学的なパーツの組み合わせから成るファサードのデザイン。
特に夜のライトアップされた中に複雑な陰影をまとった姿の存在感は圧巻です。

f:id:matsu_nao:20160511222309j:plain

このファサードのデザインですが日本人の建築家、照井信三さんの手によるものだそうで照井さんご本人は下記のように紹介されています。

いくつか、日本の伝統柄を見ていくうちに組み亀甲という柄に目を留めました。おっ、これは立体化すれば面白いんじゃないか?これを何らかの形で立体化してファサードにまとわせれば、現代的で洗練されたデザインになるなと思いました。
(中略)
ここで一番重要なのは、日本の伝統柄をデザインの源泉にしているのでどこか私たち日本人のDNAにすりこまれた日本を暗喩しているということです。一見、デザインされたものだけに見えますが、日本の伝統のエッセンスが込められているのです。

出典:http://homepage1.nifty.com/shinzoterui/pages/stellamccartney.html


組み亀甲という伝統柄とそれが織りなす陰影が日本的な情緒を感じさせ、しかしウェットさを感じさせない洗練されたデザインは本当に秀逸ですね。
夜間、正面のスクリーンに映し出される映像も印象的で、本当に完成度の高い建築だと思います。

youtu.be

そんなステラ・マッカートニー表参道ですが、どうもこの照井信三さんと施工した竹中工務店の間で著作権を巡る訴訟が進行しているようです。
先日放送された弁護士の水野祐さんを紹介した「情熱大陸」でこの件が取り挙げられていました。名前は伏せられていたものの、特徴的なデザインからすぐにそれと分かりました。

個人的にとても好きな建築のデザインでこのような訴訟が起きていることは非常に残念です……
とにかく一日も早い解決を願うばかりです。

2015年の観劇まとめ

2015年に足を運んだ舞台は以下の通り

  • 2月:NODA MAP「エッグ」
  • 3月:フィレンツェの麦わら帽子
  • 9月:アンドレア・シェニエ
  • 11月:ブロッケンの妖怪
  • 12月:仮面舞踏会
  • 12月:ツインズ
  • 番外:11月:NTライブビューイング「ハムレット


2014年は9本だったので、今年は全然及ばず。
合計本数もそうですが、6本中3本が妻の出演舞台やその関連の公演なので、今年はだいぶ劇場から遠ざかってしまいました……

今年前半は家探し〜家の購入に忙しく、週末の予定がなかなか立たなかったので仕方ない状況ではありました。
結果的にオペラを観る機会が多かったのですが、「フィレンツェの麦わら帽子」は国立音楽大学OBOGによるキャストが素晴らしかったですし、「仮面舞踏会」も粟國淳さんの演出が実にオペラらしいダイナミックなもので非常に見応えのある舞台でした。

そんな中で「番外」に入れましたがロンドンのナショナルシアターのライブビューイング「ハムレット」は本当に良かった。
絶対にロンドンでライブで観たい!という気持ちになりました。
もう、装置も演出もキャストの演技も、全てが次元が違う感じで、「こんな演劇の世界があるのか!!!」と、まさに衝撃を受けました。
ナショナルシアターの公演を映像でちゃんと観たのは初めてだったわけですが、とりあえず来年予定されているナショナルシアターのライブビューイングは隈なく観たいくらいの気持ちです。
www.vogue.co.jp

国内の演劇ですと、今年はNODA MAP「エッグ」から始まり「ブロッケンの妖怪」「ツインズ」と3本だけでしたが、野田秀樹倉持裕長塚圭史、とをしっかり押さえられたのは良かったです。いずれも見応えのある舞台だったと思います。

ちなみに来年1本目と思ってたNODA MAP「逆鱗」はまだチケット入手できず……(なんとか入手すべく奔走しています。
来年こそは月1観劇を全うしたいと思う、2015年の年末でした。




http://operaprojectkunitachi.com/?p=536

http://www.tohostage.com/brocken/
http://www.bunkamura.co.jp/orchard/lineup/15_kamen.html

http://www.ntlive.jp/index.html

さよならホテルオークラ本館・「最後の男爵」が残した昭和モダニズムの傑作

ホテルオークラ本館の建て替えを前に今月いっぱいで本館は一時閉館となります。
個人的には2009年に同ホテルの新館で挙式、披露宴を行ったこともあり、格別な思い入れのあるホテルです。
本館には挙式、披露宴の際に宿泊させていただき、式に伴う記念撮影も本館の各所で行いました。(中でも本館ロビーで撮ったスナップは最高の一枚と思っています。)
それだけに今回の建て替えは非常に感慨深く、また名残惜しい気持ちを日々募らせています。

「最後の男爵」が残した傑作

ホテルオークラというと「帝国ホテル」「ホテルニューオータニ」と並び「御三家」と評され日本のホテルにおける最高峰として認知されています。
https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/macha310/20150814/20150814095704.jpg
ホテルオークラ閉館。1万8千坪の芸術はどう生まれ変わるのか | リクナビNEXTジャーナル

公職追放により帝国ホテルを離れた大倉は、日本国憲法の制定により、華族としての待遇も奪われる。しかし、国内屈指の工芸家たちへ日本の美を以って諸外国の貴賓を迎えるホテルの理念を熱心に説き、その協力を得てホテルオークラを開業させた。明治以降の日本に存在したであろう貴族の精神を証明するという野心と「最後の男爵」としての意地により、「帝国ホテルを超えるホテル」をコンセプトに設立されたホテルである。
出典:ホテルオークラ - Wikipedia

ホテルオークラ大倉財閥の二代目である大倉喜七郎によって昭和33年に設立されました。

  • 帝国ホテルを超えるホテル
  • 日本の工芸、建築の粋を極める
  • 最後の貴族としての誇り

まさに大倉喜七郎の意地と野心によって作り出された近代日本の傑出したホテルであり、建築だったのだと思います。

オークラ本館の建物

ホテルオークラ本館の設計、デザインは谷口吉郎や小坂秀雄ら多くの才能が集合し企画されました。

1962年竣工。設計:谷口吉郎(ロビー、オーキッドルームほか)、小坂秀雄(外観)ほか。世界に通用する日本独自のホテルを、という創業者・大倉喜七郎の思いの下、1962年に開業した〈ホテルオークラ東京〉。当時の日本における最高の建築、工芸技術を集約すべく、設計委員会(谷口吉郎、小坂秀雄、岩間旭、清水一、伊藤喜三郎)と意匠委員会(溝口三郎、繁岡鑒一、広井力、縣治朗、岩田清道)が設置されデザインされた。建物の構造としては、どの部屋からも景色が楽しめるよう、ホテルとして当時初となる「三ツ矢式建築」を採用。海外からも「日本モダニズムの傑作」と評価の高い本館ロビーは、設計委員会委員長を務めた谷口吉郎のデザインだ。73年には、谷口を中心とした設計チームにより別館が増築された。
出典:ホテルオークラ東京 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

和瓦が貼り詰められた海鼠壁仕上げが特徴的な外観も好きですが、やはり谷口吉郎によるロビーのデザインの静謐がホテルオークラが日本を代表するホテルとしての気品を体現していると思います。
麻の葉紋、格子の窓から障子越しに差し込む穏やかな光の陰影。「オークラ・ランタン」と愛称される印象的な切子玉を模した照明。日本的な意匠を凝らした空間の静寂は和洋という概念を超えて結び付き、モダンな調和を空間に与えています。
和洋が完全に調和しているからこそ、一点の濁りもない気品がこのロビー全体に満ちているのだと思います。

https://i1.wp.com/www.tokyodeasobo.com/wp-content/uploads/2015/04/DSC06677.jpg?zoom=2&resize=716%2C478
【東京の朝ごはん】ホテルオークラ東京 フレンチトースト - 東京で遊ぼう

Casa BRUTUS (カーサ・ブルータス) 2015年 01月号

Casa BRUTUS (カーサ・ブルータス) 2015年 01月号

建て替えを惜しむ声、反対運動

今回の建て替えにあたっては特に海外の著名人から建て替えに反対する声が挙りました。

casabrutus.com
www.sankei.com

いずれも影響力のある著名クリエイターがこの日本モダニズム建築の傑作を惜しみ、それぞれに声を挙げられました。
「傑作的な建築作品」として遺すべき、という観点ももちろんありますが、印象的なのはいずれも「オークラを愛し」「オークラの空間を守りたい」という気持ちを込めたメッセージである点。
優れた建築であると同時に「最高のホテル」として現在のオークラがいかに多くの人々に愛されているかを感じます。
たしかにオークラに行くと、そこかしこに老朽化を感じさせる部分もありますし、現代的なホテル空間と比べると手狭さを感じさせることもあります。
続々と外資系の高級ホテルが東京に進出し、競争が激化する中で「日本のホテルのトップ」としてのプレゼンスを維持するためには建て替えも止む無しという気もしますが、
それでも、やはり今のオークラの良さ、オークラらしさを失ってほしくはないと強く願います。
オークラ側も現在のオークラを踏襲すると表明していますし、なにより今回の設計に谷口吉郎さんの息子さんである谷口吉生さんが携わることは大いに期待できるのではないかと思っています。

谷口吉郎谷口吉生

勝手ながら個人的にはそのようにこの2人の建築家をみています。
それぞれの時代や背景の違いがありながらも、2人は共通の地平を見ているような、そんな気がしているのです。
「現在のオークラ」への名残惜しさは尽きませんが、しかしそれと同時に谷口吉生が作り出す「新しいオークラ」に今は大きな期待も寄せています。

谷口吉生建築作品集

谷口吉生建築作品集

漂うモダニズム

漂うモダニズム

谷口吉郎 - Wikipedia

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/5/5c/National_Museum_of_Modern_Art%2C_Tokyo.jpg/1920px-National_Museum_of_Modern_Art%2C_Tokyo.jpg
東京国立近代美術館本館

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/b/b0/Toyokan_of_Tokyo_National_Museum.jpg
東京国立博物館東洋館


谷口吉生 - Wikipedia

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/8/8b/MoMa_NY_USA_1.jpg
ニューヨーク近代美術館新館

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/5/53/MIMOCA06s3s4592.jpg/1920px-MIMOCA06s3s4592.jpg
丸亀市猪熊弦一郎現代美術館

「天才スピヴェット」「ビッグ・アイズ」…GWなので目黒シネマに籠ってみました

目黒シネマで2本立てを見ました。
ジャン=ピエール・ジュネ「天才スピヴェット」とティム・バートンビッグ・アイズ」の2本立て。
なかなかのチョイスですね、目黒シネマさん!

spivet.gaga.ne.jp
bigeyes.gaga.ne.jp

ビッグ・アイズ」についてはティム・バートンらしい雰囲気がなく、意外にごく普通の商業映画という趣き……こういう映画も撮るんですね、ティム・バートン
正直なところ、期待したものとは少し違っていて、物足りなさを感じてしまいました。

一方の「天才スピヴェット」!!
こちらは予想以上に「好み」の作品でした。
個人的な好みとしては「どストライク」な感じ

ノスタルジーを感じさせる世界観、弟を失った家族の空虚、それぞれが歪な家族それぞれのキャラクター
それだけでも充分な上に、なんとロードムービー要素まで盛り込まれてしまって、もう完璧な好みの作品でした

こういう映画観たのが久々な気がするので、観賞後もテンション上がってしまって、翌日はその勢いのまま「バードマン」を観に行ってしまったくらい……(そしてその「バードマン」も期待を裏切らない完璧な作品だったわけですが)

と、GWは映画を観ようと決めていたわけですが、とりあえず3本までは観ました
あと1〜2本観たい
何を観よう、、とりあえず「セッション」だろうか
昨日予告編を観た「The Trip to Italy」か

うーん、映画テンションが久々に高まっている今日この頃でした

www.youtube.com
www.youtube.com

session.gaga.ne.jp
www.crest-inter.co.jp

二条城でオペラ「蝶々夫人」

世界遺産でライブっていうと今年世界遺産登録された富岡製糸場だったり、意外にあちこちでいろんな団体やアーティストがイベントをやってるんですね

ちょっと検索しただけでもいろいろ出てきます。

そんな中で今回紹介するのは「世界遺産でオペラ」という趣向。
9月21日(日)に京都二条城で催されるオペラ「蝶々夫人」の公演を観に行けることになったので、その紹介とオペラ「蝶々夫人」について少し書きたいと思います。

http://www.kyoto-opera-festival.com/

今回は二条城の二ノ丸御殿中庭、野外でのオペラ公演になります。
演目はブッチーニの代表作の一つ「蝶々夫人」。
指揮者はイタリア・ボローニャで活躍されている吉田裕史さん。
この吉田さんが以前に指揮をされたオペラに私の妻も出演していたことがあり、今回の公演のことを知ったわけです。

このオペラ企画、昨年は同じく京都の世界遺産清水寺で「ドン・キホーテ」を上演しており、
今回はその第二弾ということになります。


マルティーニ作曲「音楽の先生」「ドン・キホーテ」 Kyoto Opera Festival at Kiyomizu, Martini Intermezzi - YouTube

昨年の公演も話題となったようですが、今回も「蝶々夫人」という演目を京都で上演するという点も個人的には面白い企画だなぁと思っています。

そもそも「蝶々夫人」ってどんな作品なのかってことを簡単に説明します。
あらすじはこんな感じ。

  • 長崎の大村という港町を舞台とした話
  • 没落士族の娘で身寄りのない15歳の芸者蝶々さん
  • 蝶々さんはアメリカの海軍士官ピンカートンにおよそ100万円で身請けされます
    • いわゆる現地妻って感じですね
  • 純粋な蝶々さんはそんなことは知らずにピンカートンに尽くします
  • でもピンカートンは任期が終わると当然ながらアメリカに帰ります
    • もちろん蝶々さんは日本に置いて……
    • ピンカートンと蝶々さんの間には男の子も産まれています
    • それでも構わずヤンキーは母国へ帰ってしまいます
  • それから3年が経ち、ピンカートンは再び日本を訪れます
    • ピンカートンはどうせ蝶々さんは別の男性と再婚でもしているだろうと鷹をくくっています
    • でも実際には蝶々さんはずっとピンカートンを待っていたのでした
  • そのことを知ったピンカートンはビビって逃げてしまいます(とんだヘタレヤンキーです)
  • 意外なのはピンカートンの正妻ケイトの行動
    • なんと蝶々さんとピンカートンの息子を自分が引き取るとか言い出します
  • 蝶々さんはその申し出を受け入れるのですが、信じていたピンカートンに裏切られて絶望します
  • 絶望した蝶々さんは士族の誇りを胸に自害して果てます

以上がオペラの現行版のあらすじです(これがまた初演版だったりするといろいろ話が変わってきます)

要するに「ヤンキーに買われて弄ばれた長崎の少女の悲劇」というのが「蝶々夫人」のざっくりストーリーとなります。(本当に酷い話だ……)

有名なオペラだし、人気もあります、名作だと思うし、アリア「ある晴れた日に」は本当に名曲だと思います。
が、しかし、本当に日本人の立場から見ると最低の話だし、このオペラで感動することには日本人としてためらいを感じます。
実際に明治期にはこんな話っていろいろあったんだろうなぁと想像も出来るし、それを考えれば尚更、この作品のことを手放しに評価するのは日本人として抵抗を感じるわけです。

この作品、実は個人的には実に思い入れのある作品です。
というのも大学時代に唯一私が演出を任されたのがこのオペラ「蝶々夫人」でした。
演出を引き受けた経緯はいろいろあったわけですが、最終的な動機としては

  • 日本人である自分たちが日本人の立場を持って「蝶々夫人」を表現することの意義
  • 大学生という若い自分たちが等身大に近い蝶々さんを表現したい

という2点が大きかったと記憶しています。

特に海外での「蝶々夫人」の公演はいわゆる「間違った日本」が演出されていることが多く、それだけで日本人としては見るのが辛い公演が多いという印象がありました。
それに(これは仕方のないことですが)15歳の少女を40代50代のソプラノが演じるのはやはり表現として適切ではないと感じており、歌い手の力量的に相応のキャリアが不可欠という観点は理解しつつ、それでもやはり蝶々さんの悲劇は等身大のキャストが演じてこそ、という部分もあると考えていました。

そんな思い入れのある「蝶々夫人」を二条城という特別なシチュエーションで観れるというのは二度とない体験で、今から公演が楽しみです。
野外の公演なのでどうか天候だけは無事であるよう心から祈っています。

「美術家」会田誠と民主主義について

ヨーゼフ・ボイスに感化されて美術の道に進もうとした私は

「アーティストはもっと社会と関わるべき」

「アーティストはもっと語らなければならない」

とどうしても思ってしまいがちなんです。

しかし、「美術家」会田誠はそれとは違った立場、在り方を感じさせてくれます。

それでいて、彼の作品はあまりにも雄弁ではありますが、、

しかし、会田誠山口晃天明屋尚らの作品を見ていると「言葉」や「概念」を超えた表現、グラフィックそのものの「語る力」を強く感じます。

新政府総理という人ーワタリウム美術館に行く前に

とある対談での言動からあまり坂口恭平という人物の印象がよろしくないのですが、今回のワタリウムの企画は周囲の評判が良いようで、、

食わず嫌いもなんなので、ちゃんと観に行こうと思ってます。

その前に、世間の評判をざっとまとめてみました。

坂口恭平 新政府展

 

 

 

あ、そうか!今週行かないと終わっちゃう!!

 

独立国家のつくりかた (講談社現代新書)

独立国家のつくりかた (講談社現代新書)

TOKYO 0円ハウス 0円生活 (河出文庫)

TOKYO 0円ハウス 0円生活 (河出文庫)

ゼロから始める都市型狩猟採集生活

ゼロから始める都市型狩猟採集生活

0円ハウス

0円ハウス

隅田川のエジソン (幻冬舎文庫 さ 33-1)

隅田川のエジソン (幻冬舎文庫 さ 33-1)

思考都市 坂口恭平 Drawings 1999-2012

思考都市 坂口恭平 Drawings 1999-2012

独立国家のつくりかた (講談社現代新書)

独立国家のつくりかた (講談社現代新書)

TOKYO 0円ハウス0円生活

TOKYO 0円ハウス0円生活

 

アートと周辺ビジネスー森美術館問題について

森美術館問題

http://paps-jp.org/action/mori-art-museum/

このPAPSの抗議活動から感じた、アートと周辺ビジネスの在り方についてのツイートまとめ

 

 

 

 

 

天明屋尚「韻」展

天明屋尚「韻」展

http://mizuma-art.co.jp/exhibition/1346510201.php

韻、反復とリズム。

合戦図の中に幾重にも織り込まれた「韻」

シンメトリーに置かれた1双の絵画が作り出す調和とそれに対する赤砂の庭に浮かぶ髑髏のアンバランスなリズム。

合戦図に描かれた荒々しい様に目がいってしまうが、緻密な、

実に考えられた絵画中の画面構成と庭と絵画の空間構成に引き込まれた展示でした。

http://mizuma-art.co.jp/artist/0190/works/0190_1359781369.jpg


2012

アクリル絵具、金箔、木
126.5x300cm
撮影:長塚秀人
(c)TENMYOUYA Hisashi

 

MIZUMA ART GALLERY : 天明屋 尚 / TENMYOUYA Hisashi

 

以下、ミズマアートギャラリーの解説 

今回、天明屋は乱世の不穏な空気漂う合戦図の大作に挑みます。現代の侍を彷彿とさせる黒髪の侠達が変わり兜を纏った異相の馬と虎に跨がり、絡み合い闘う群像劇の壮麗さは間違いなく今展の見所の一つです。しかし会場ではさらに、来場者が自身の眼を疑うようなある仕掛けが施されています。一見、鑑賞者の眼力を試すかのようにも取れるその趣向はしかし、芸術作品を取り巻く視線や制度に鋭い批判の眼差しを向けています。合戦図の中の火種は、思わぬ形で私達の認識の中に飛び火して来ることでしょう。

天明屋尚は、2000年に日本伝統絵画を現代に転生させる独自の絵画表現「ネオ日本画」を標榜し、権威主義的な美術体制に対して絵で闘う流派「武闘派」を旗揚げ。2010年には南北朝期の婆娑羅、戦国末期の傾奇者といった、華美(過美)で覇格(破格)な美の系譜を“BASARA”として提唱。最近では、美術の制度に一石を投じるべく、コマーシャル・ギャラリーをプロデュースするなど、これまで一貫して反骨精神に根差した活動を続けて来ました。確信犯的なタブー侵犯を含んだ今回の展示は、まさに過美にして破格の“BASARA”の精神を体現するものと言えるでしょう。

また今展では作家初となる大規模なインスタレーションも設置。合戦図と同じ「韻」をタイトルに持つこのインスタレーションは、合戦図と対を成す補完関係にあり、現実と虚構の境界を揺さぶるメタフィジカルな視線はここでも顕在です。そこには、安全神話が崩壊してしまった3.11以後の世界における確かなリアリティが刻印されており、鑑賞者は現実世界が次第に蝕まれてゆく不気味な足音すら感じるかもしれません。

会心の問題作となることを予感させる今展。複雑に絡み合い、幾重にも張り巡らされた天明屋の仕掛けた罠をどう受け止め、どう読み解くか。ぜひともご高覧下さい。