art × social × blog

日常のこと、スポーツやアートのこと、仕事のこと

サイクルロードレースの魅力について

※この記事ははてなスタッフアドベントカレンダーの12月4日の記事です。

はてなブログ」や「はてなブログMedia」を担当していますプロデューサーの id:matsu_nao です。
今回のスタッフアドベントカレンダーのテーマは「好きなもの」ということで、このブログでも度々書いているサイクルロードレースについて書きたいと思います。

ツール・ド・フランスとの出会い

私がサイクルロードレースを見始めたのは実に20年以上前のことで高校生の頃のこと。
当時はミゲル・インデュラインが全盛期で、ツール・ド・フランス5連覇(91年〜95年)を達成し、92年93年にはツール・ド・フランスジロ・デ・イタリアの両レースで総合優勝する、所謂「ダブルツール」 を達成した時期です。
高校の同級生でフランスかぶれの友人がいて、彼が熱心にツール・ド・フランスを勧めるので仕方なく付き合いで深夜のダイジェスト放送を見たのがきっかけでした。
それまで全く知らなかった世界で、その友人と私以外にはおそらく周囲の友人も誰も触れていない世界に触れる新鮮さと特別感に惹かれていたのだと思います。

その後、2000年代に入る頃、ロードレース界で巻き起こったドーピング騒動によって、ロードレースへの興味を一気に失ってしまった時期もありましたが、2010年頃から再びツール・ド・フランスを見るようになり、ここ数年はグランツールツール・ド・フランスジロ・デ・イタリアブエルタ・ア・エスパーニャの世界3大レース)はもちろんのこと、主要なレースを万遍なく見るくらいに、以前にも増して熱量を持って観戦しています。

ロードレースの魅力

私が思うロードレースの魅力を幾つか挙げると……

  • チーム戦略、駆け引き
  • 様々な能力、特長を持った選手
  • 長期戦のドラマ

といったところでしょうか。
他にも見どころはいろいろありますが、今回はこれらの点について詳しく紹介したいと思います。

チーム戦略、駆け引き

サイクルロードレースではエースの選手(以下、エース)の成績が最も重視されます。
実際、前述のミゲル・インデュラインのように数々の英雄が歴史に名を刻み、賞賛されています。しかし、そのエースを勝たせるための実に高度なチーム戦略が存在する点がロードレースの最大の魅力だと思っています。
ただ一人のエースを勝たせるためにチームの各選手はそれぞれに役割を持ちレースに臨みます。
例えば、

  • 平坦区間でエースや他のチームメンバーの先に立って牽引する役割
  • 上り区間でエースを牽引する役割
  • ゴール手前のスパートでエースをぎりぎりまで牽引して有利な位置に導く役割
  • 逃げ集団に入り込んで集団を牽制する役割

といった具合で、各選手の個性に応じて様々な役割が与えられ、彼らは自分自身の成績ではなくエースの勝利のために力を尽くします。

ツール・ド・フランスでは、3週間のトータルタイムで競われる総合優勝の他に、ステージ毎の優勝(大会期間中の日別の優勝)、総合の山岳賞、総合のポイント賞といった各賞が設定されています。
エースの総合優勝が最大の栄誉であり多くのチームの目標ではありますが、それと同時にこれら各賞をいかに獲得できるかを目標として戦略を立てるケースもあり、そうしたチームの狙いに応じて、選手の走り方も違ってきます。
そうした観点で、今年のツール・ド・フランスの第10ステージで勝利した、チーム「オリカ・バイクエクスチェンジ」の「戦術・戦略」は特に印象的なものでした。

様々な能力、特長を持った選手

サイクルロードレースには上記のようにチーム戦略に応じて、様々な個性を持った選手が必要とされます。
選手はその能力や特性によって例えば下記のように分類されたりします。

スプリンター 瞬間的なスピードに長けた選手
平坦なコースではゴール手前で一気に加速して、ステージ勝利を狙う
クライマー 上りのスペシャリスト
エースを上り区間で牽引したり、自身も山岳でのポイントを稼いで山岳賞を狙うことも
ルーラー 平坦区間で長い距離を一定スピードで走りきる独走力を持った選手
個人タイムトライアルではステージ優勝を狙う
パンチャー 短い距離のアップダウンを得意とする選手
集団から逃げて、逃げ切りのステージ勝利を狙うケースも
オールラウンダー 高い登坂力と平地での独走力を持ち合わせた文字通りのオールラウンダー
近年のグランツールではオールラウンダーが総合優勝するケースが多い


上記以外にも、石畳のような悪路を得意としている選手もいれば、強風(特に横風)の場面で脚力を発揮するような選手もいたりと、実に様々な個性を持った選手が様々な役割を持って、様々なシチュエーションで活躍する……これもサイクルロードレースの醍醐味かと思います。

長期戦のドラマ

グランツールでは実に3週間に渡ってレースが繰り広げられます。
下の図は今年のツール・ド・フランスの全コースを記したマップです。
https://cdn.cyclist.sanspo.com/photos/2015/10/TDF_2016_MAP_01b.jpg
出典:http://cyclist.sanspo.com/211359

2016年ツール・ド・フランスでは長いステージで230km超(これを1日で走ります)
全21ステージの合計距離は約3,500km(これを途中2日の休息日を挟んで23日間で走ります)
1日の消費カロリーは6000〜7000kcalにも及び、選手は毎日3500〜4000kcalのエネルギーを走りながら補給食で補いレースを続けます。
したがって長いステージレースで活躍する選手の条件には「胃腸の強さ」が挙げられるほど、強靭な肉体と共にタフさが求められるのがサイクルロードレースでもあります。
そんな長いステージレースでは様々なアクシデントも付き物で、特に今年のツール・ド・フランスでは様々な事件も発生しました。
特に第12ステージの「事件」は何年もロードレースを見てきた私も衝撃の光景でした。

こんなアクシデントに見舞われながらも総合トップを守り、最終的に総合2連覇を果たしたクリス・フルームには脱帽せざるを得ません。

注目の選手

さて、そんなサイクルロードレース界には、今一人の個性的なスターが存在します。
ツール・ド・フランスでは2012年から5年連続でポイント賞を獲得(5年連続はエリック・ツァベルの6年連続に次ぐ史上2位)、2015年2016年には世界選手権を連覇(ちなみに連覇は史上6人目の快挙)……スロバキア出身の26歳、ペーター・サガンです。
スプリンターとしての実力はツール5年連続のポイント賞で明らかですが、元々マウンテンバイクの選手だったこともあって、上りにも強く、バイクコントロールにも長け、加えて天性の勝負勘にも恵まれた、まさに天才とはサガンのことを指すと思えるほどに圧倒的な才能を持った選手です。
また独特の立ち振舞いも有名で、奇妙なゴールパフォーマンスや、表彰台での可笑しなポーズは、これもまた天才サガンゆえの個性かと思います。
そんなペーター・サガンですが、先日トップカテゴリへの昇格が決まったばかりのボーラ・ハンスグローエと契約し、新天地での活躍を目指しています。
有力チームではなく昇格したての新興チームに移籍するあたりはいかにもサガンらしい選択。
とはいえ、チームメイトにはラファル・マイカ、マチェイ・ボドナールといった旧ティンコフからの移籍組も揃い、新興チームと侮れない選手が揃いました。そもそも単独でも充分に立ち回れる能力を持ったサガンですから2017年の活躍に今から期待が高まります。

自転車乗りとして

長年ロードレースを観てきた私ですが、自分でレースに参加したり……ということはこれまでありませんでした。
そんな中つい先日ですが、初めて自転車のイベント「BIKE TOKYO 2016」に参加してみたりもしました。
普段から移動の足として日常から自転車には乗っていますし、去年からは片道12kmの道のりを自転車通勤していたりもするのですが、都心の37kmの道のりを1000人以上の参加者が連なって走るという体験は新鮮なものでした。
ロードレース観戦はこれからも続けていくと思いますが、自分自身の自転車体験も充実していけると良いなぁ……などと思う今日この頃です。

はてなスタッフアドベントカレンダーの明日の担当はid:Yabre-Kabreさんです。

f:id:matsu_nao:20161127122826j:plain

ツール終幕。グライペルがついにステージ勝利:ツール・ド・フランス2016第21ステージ

ツール・ド・フランス2016

3週間にわたるツールドフランスのドラマも最終章となりました。最終日となる今日はパリまでの凱旋。穏やかなパレードランとパリ市内の周回コースに入ってからはスプリンターたちの最後の勝負が繰り広げられます。

様々なドラマが繰り広げられたツールドフランス2016も、いよいよフィナーレとなります。
通例、最終ステージではゴールスプリントに向けた攻防以外はレースとしての争いは控えられ、3週間の険しい道のりを走りきった選手たちを温かくパリに迎え入れるパレードランが展開されます。

パレードの中心は言わずもがなですが、マイヨ・ジョーヌを擁する優勝チーム。
今回もスカイの選手たちはマイヨ・ジョーヌに合わせた黄色のアクセントでデザインされた特別なジャージをまとい、同じく黄色をあしらったヘルメットやバーテープで、マイヨ・ジョーヌを讃えパレードランを盛り上げます。
これまでの3週間の緊張感から解放され、スカイの選手たちの手にはシャンパングラスがあったりします。(もちろんアクチュアルスタート前のニュートラル時の話です)

レース中にこんなツイートが流れるのも最終ステージならでは、かもしれません。


さて、上記で「通例は…」と書きましたが、最終ステージも必ずしもスプリント争いになるとは限りません。
2005年にはアレクサンドル・ヴィノクロフが周回コースのラスト1周で抜け出し、そのまま逃げ切り優勝を飾っていますし、1982年は(これは厳密にはゴールスプリント勝負ですが)ベルナール・イノーマイヨ・ジョーヌ着用者であるにも関わらず、途中でアタックを仕掛け、さらにその後のゴールスプリントも制してステージ優勝してしまった……というような劇的な展開がありました。
また、1989年にはなんと最終日に個人タイムトライアルが実施され、しかも、そのステージの結果で首位を逆転しマイヨ・ジョーヌを獲得したグレッグ・レモンの例もあります。※シャンゼリゼ通り (ツール・ド・フランス) - Wikipedia

さて、では今年は……というと、例年通りのパレードランがパリの周回コースに入るまで続き、周回コースからゴールまでは猛烈なスピードで駆け抜け、そのままスプリントに雪崩れ込むという一般的なツール最終日の展開が踏襲されます。

そんな中、今日特に不運に見舞われたのはエティクス・クイックステップ
まずトニー・マルティンですが、周回コースに入る手前でなんとリタイア!
3週間走り続けてきて、あと残り40km余りのところで膝の痛みを感じてリタイアとのこと。
リオオリンピックを睨んで大事をとって……ということですが、それにしてもこのタイミングでのリタイアは無念ですね。今大会では個人成績としても奮わなかった上でのリタイアとあって、マルティン自身も不完全燃焼だったに違いありません。是非、リオオリンピックでは再び圧倒的な力で個人タイムトライアルを制して欲しいと期待します。

次にマルセル・キッテルですが、周回コースに入ってからのメカトラブル発生。チームカーからサブバイクを手渡されて、それに跨って走り出すものの、このサブバイクも後輪にトラブルがあり、後輪を取り替えるハメに……
こんなアクシデントが2重に積み重なることが果たしてあるのか!?と思いたくなるくらい、このトラブルはあまりに不運でした。結果キッテルはこのアクシンデントによりメイン集団から1分以上のタイムを失い、その後何とか集団に復帰はするものの、ゴールスプリントで他のライバルに使うはずだった足を浪費し、最終的にゴールスプリントにはほぼ絡めなかったというのは本人もロードレースファンにとっても残念な出来事でした。

そんなエティクス・クイックステップの悲劇とは関係なく、メイン集団は順調に周回コースを回って行きます。
各チームとも、何とかエースを有利な位置でスプリントに持ち込むべく、トレインを組んで猛烈なスピードでシャンゼリゼの石畳ももろともせずに走っていきます。
しかし、最終局面まで有効なトレインを組めたチームはなく、最終的には個々のエースが自力でぶつかり合うガチスプリントに雪崩れ込んでいきます。
クリストフがやや先行し、それをグライペルがかわす……しかし、グライペルの後方から猛烈に追い上げるサガン
最終的にサガンの追い上げは一歩届かず、グライペルがステージ勝利!!
今大会ではまだ未勝利だったグライペルが最後の最後でステージ優勝。カヴェンディッシュ、キッテル、サガンらと並ぶ現役最強スプリンターの一角を自分が占めることをあらためて示したステージ勝利でした。

さて、3週間にわたるツールドフランスの戦いも今日で終焉となりました。
今大会、様々な事件や波乱があったものの、振り返ればフルームとスカイの圧倒的な力が目立った大会でもありました。
そんなスカイの9人が並んで肩を組み、シャンゼリゼのゴールに向かう姿は自信に満ち溢れ、なんとも印象深いものでした。
8月に入ると今度はリオオリンピックが始まります。
ツールで活躍した選手はもちろんですが、ツールでは無念な結果に終わった選手もツール以上のパフォーマンスで大会を盛り上げてくれることを期待します。

hatenablog.com
jsports-cycle.hatenablog.com

イサギーレインサウスティ、スペインの伏兵がダウンヒルを制して勝利:ツール・ド・フランス2016第20ステージ

ツール・ド・フランス2016

いよいよアルプス最終日。シャンゼリゼを前に事実上の総合争いの最終日となります。


超級1つ、1級2つ、2級1つというコースプロフィールですが注目は超級を登りきった後に12kmのダウンヒルでゴールという点。事実上の総合争いの最終ステージにダウンヒルゴールを用意するというのはいささか大会運営側も意地が悪い……というか、総合を争う選手、ステージ優勝を争う選手にとっては油断大敵な難コースです。

今日のステージまでに、ポイント賞のペーター・サガン、山岳賞のラファル・マイカはジャージ獲得を確定。(あとはシャンゼリゼでゴールしさえすれば良いという状況。)
総合も首位はクリス・フルームが盤石といって良いタイム差をつけています。(2位のロメン・バルデに4分11秒差)
一方で2位のロメン・バルデから7位のアレハンドロ・バルベルデのタイム差は2分9秒。新人賞争いも首位のアダム・イェーツと2位のルイ・メインチェスが2分16秒差と、総合2位以下の表彰台争い、新人賞争いはまだまだ予断を許さない僅差の争いとなっています。
今日も長めのダウンヒルを含む難コースでしかも天候も不安定と、昨日のステージの混戦再びとなると何が起こるか分からない状況です。

各賞が決まりましたから基本的に今日も逃げに参加するのは「あわよくばステージ優勝」を狙った、トーマス・デヘントやハリンソン・パンタノ、イルヌール・ザカリン、ジュリアン・アラフィリップ、ルイ・コスタ、ピエール・ローランといった「いつもの顔ぶれ」。
そこに何とヴィンチェンツォ・ニーバリやペーター・サガンといったビッグネームも参加し、総合12位のロマン・クロイツィゲルの姿も見えます。クロイツィゲルは総合のジャンプアップ狙い、サガンはそのアシスト、ニーバリは自身のステージ優勝というオプションもあるでしょうが、基本的にはファビオ・アルのアシストとして「前待ち」を狙った動きでしょう。

実際、サガンはしばらく集団の先頭でペースを牽引し、一時はメイン集団に6分の差をつけ、クロイツィゲルは暫定で2位に上がるまでのタイム差を獲得します。これだけ登れる選手がポイント賞ジャージをまとっているのですから、サガンという選手の異次元の能力をまたしても感じさせる走りでした。

サガンが2つ目の1級の途中でアシストの役目を終えると、先頭集団では徐々に細かなアタックが繰り返されます。デヘントやローラン、コスタが抜け出しを試みるものの決定的な差をつけることは出来ず、集団に吸収されます。
最終的に集団からの離脱に成功したのはハリンソン・パンタノとジュリアン・アラフィリップの2人。今日2つ目の1級山岳コル・ド・ラ・ラマの山頂を越えると今日も雨で濡れた下りでパンタノとアラフィリップが次々にアタック。圧倒的なダウンヒルのスピードで先頭集団からの抜け出しに成功します。
第15ステージで惜しくも落車でステージ勝利を飾れなかったアラフィリップと、そのステージで見事に初のグランツール勝利を獲得したパンタノの因縁の逃げ。2人とも一歩も譲らず(しかも協調して後方集団から逃げるようなこともなく)ガチンコの先頭争いを繰り広げていきます。

そんな中、メイン集団でファビオ・アルが遅れたことによって「前待ちアシスト」としての役割から解放されたヴィンチェンツォ・ニーバリが猛烈な勢いで先頭の2人を追い始めます。(そしてさらに実はヨン・イサギーレインサウスティもニーバリに続いて追走集団から抜け出し先頭グループを追います。……ただし、このインサウスティの動きがちゃんと放映されてないので抜け出たタイミングがよく分からない……)

さすがグランツール全てを制覇した男、ヴィンチェンツォ・ニーバリの追い上げは鋭く、最後の超級コル・ド・ジュー・プラーヌの中盤で先行するパンタノ、アラフィリップを捉えます。そして並んだところでさらにニーバリのアタックが続きます。これにアラフィリップは対応できず、あっという間にニーバリ、パンタノから遅れてしまいます。
そして、遅れたアラフィリップをパスしてさらには先頭のニーバリ、パンタノを超級山頂を前に捉えたインサウスティ。最後のダウンヒルにはこの3人が揃って突入していきます。

今大会これまでに驚異的なダウンヒルを見せているパンタノ。数々のグランツールダウンヒル巧者ぶりを見せつけてきたニーバリ。彼らに対して、インサウスティにはダウンヒルについては「特別な強さ」はないはずでした。
ダウンヒル序盤のコーナーでオーバーランしたパンタノがやや遅れ、インサウスティとニーバリが先行する展開。しかし、徐々にニーバリが遅れていきます。
前日のダウンヒルクリス・フルームに巻き込まれる形で落車したニーバリ。形はどうあれ前日の落車のイメージはやはり今日のダウンヒルにも影響を与えているようでした。ニーバリは遅れていたパンタノにもパスされ、3位に後退。
追い上げるパンタノですが、こちらもなかなか差が詰まりません。
思い返せば、第13ステージの個人TTで8位、第18ステージの山岳個人TTでも7位と好調ぶりを見せていたインサウスティ。ここまでキンタナのアシストに徹してきたが故に目立った活躍がなかったものの、総合優勝から大きく後退したキンタナのアシストから解放され、勝負に出た今日のステージではいかんなく実力を発揮した格好です。
何よりダウンヒルであそこまで勝負に出ることができた「勇気」と「覚悟」がダウンヒル巧者であるニーバリ、パンタノをも寄せ付けないパフォーマンスにつながったのだと思います。
結果、パンタノが挽回することはなく、ヨン・イサギーレインサウスティがそのまま逃げ切ってステージ勝利。
今大会、スペイン勢のステージ勝利もここまでなかったわけですが、ここにきてようやくの勝利ということになります。

メイン集団の総合上位の争いは、、というと、ここ数日メイン集団を牽引していたアスタナがファビオ・アルの脱落によって離脱。モビスターも前に立つことはなく、結果、スカイによる完全な管理のもとにクリス・フルームは全く危なげない戦い。
前日の落車もあって、チーム一丸となってのコントロールだったのでしょうが、あそこまで完璧に集団をコントロールするスカイのチーム力をあらためてまざまざと見せつけられたステージでした。
2位以下の争いは、ファビオ・アルが6位から13位へ大きく順位を落としたこと、逆にホアキン・ロドリゲスがザカリンの強力なアシストでタイムを稼ぎ、11位から7位に順位を上げた2点が大きな動きで、表彰台やヤングライダー賞に関わるようなエキサイティングな動きは残念ながらない「落ち着いた1日」となりました。(これもスカイのコントロールと、それに対するアスタナやモビスターの動きが今日はなかった点によるものが大きいかと思います。)

アルプス最終日は総合上位の争いが低調だった分、逃げ集団による熾烈なステージ優勝争い。しかも、ヴィンチェンツォ・ニーバリが絡んだステージ優勝争いというのは見応えがありました。
最終的な総合含めたジャージ争いの結果は、というと、

と完全に有力選手が順当に勝ち取ったように見えますが、しかし各ステージともに、本当に見応えのある、しかも波乱も含んだ実に楽しい3週間でした。
明日はシャンゼリゼ
最後のスプリント争いも気になりますが、選手の晴れ晴れしいパレードランを見るのが楽しみですね。

hatenablog.com
jsports-cycle.hatenablog.com

フランス歓喜!ロメン・バルデがステージ勝利:ツール・ド・フランス2016第19ステージ

ツール・ド・フランス2016

アルプスも残り2日。総合争いでは首位のフルームが2位に4分近い差をつけて頭抜けた感じになってきましたが2位以下は混戦。
2位のバウク・モレマと6位のリッチー・ポートでタイムは1分8秒。残りの山岳2ステージでも上位陣の「表彰台」をかけた熾烈な争いが繰り広げられそうです。


146kmと比較的距離は短いものの、超級1つ、1級2つ、2級1つと終始アップダウンが続く難コース。
上位陣の接戦状況から考えると総合争いは最後の1級の山頂フィニッシュに向けた登り勝負となりそうですが、その前の超級モンテ・ド・ビザンヌから早めのアタックを仕掛けて一気にジャンプアップを狙って勝負に出る選手もいるかもしれません。
加えて超級の下りは途中、平坦に近い区間はあるものの、ほぼ40kmを下り続けるダウンヒルダウンヒルの得意な選手がこの長い下りでアタックを仕掛けて逃げを決めるという展開もありそうです。(ハリンソン・パンタノあたりは狙っていそう……)

今日の逃げ集団は山岳賞ラファル・マイカにトーマス・デヘントやハリンソン・パンタノ、ルイ・コスタといった今大会の「逃げ常連メンバー」に加えて、ピエール・ローラン、トニー・ギャロパンといった(何としてもステージ未勝利は避けたい)フランスの有力選手を含む20名余り。
超級の山頂を越えるまでは、この逃げ集団をアスタナが牽引するメイン集団が追う……という定番の展開。波乱が待っていたのは超級を超えた後の長いダウンヒルでした。

超級モンテ・ド・ビザンヌの山頂をラファル・マイカが先頭で通過し今大会の「山岳賞」を確定させた後でした。
イカが逃げグループに戻った直後にアタックを仕掛けたのはピエール・ローラン。
今大会ここまで全く目立つところのなかったローランですが、今日のスタート前のインタビューでは「ようやく不調だった体調が今日は改善して好調だ」とのチームGMのコメント。これまで今大会ではフランス人のステージ優勝がないこともあって、ローランは今日のステージには相当に入れ込んでいるようです。
そのピエール・ローランのアタックに反応できたのはルイ・コスタただ一人。ローラン、ルイ・コスタの2人による逃げになりますが、それでもこの強力なタッグがどこまで逃げるか(あるいは逃げ切ってしまうのか)残り距離は50kmくらいあるものの、期待させてくれます。

逃げ集団を追ってメイン集団が超級の山頂を通過した頃にはコースはすっかり雨模様。場所によっては結構大粒の雨が降っているようです。
雨のダウンヒル……危険な気配です。
案の定、下りに入ったメイン集団ではすぐにエフデジのレイヘンバッハら数名が落車を起こします。そしてその直後に今度は総合6位のリッチー・ポートも!この落車によりリッチー・ポートは1分半ほど集団から遅れしまいます。(その後、ヴァンアーヴェルマートらアシストの牽引もあって超級の登りまでには集団に復帰しますが、さすがに足はだいぶ使ってしまいました)

さて、先頭を走る2人にも悲劇が襲いかかります。
雨の得意なルイ・コスタダウンヒルに必死に食らいついていたピエール・ローランですが、やはり無理が祟ったのか、下りのコーナーで前輪を滑らせ落車。時速80km近く出ている中での落車ですから酷い。道路の上を15mくらい飛ばされるような勢いで、道路脇まで転げていきます。
フランス中の期待を一手に背負っての逃げでしたから、フランス中が落胆に暮れたでしょうし、何よりローラン本人が一番無念だったかと思います。

そして落車はまだ続きます。ローランの後、こちらは何の変哲も無い直線の下りでトム・デュムランが落車。(前を走っていた選手がよろけたのを躱そうして右に逸れたところを後ろにいたテクレハイマノが追突……ということでした)
結果、デュムランは左の手首を骨折。ツールの後はリオオリンピックの個人タイムトライアルで金メダルを目指す予定だったデュムランですが、思わぬところで暗雲が立ち込めてしまいました。今回のツールでもステージ2勝を上げ、好調ぶりを見せていただけに余計にリオオリンピックまでの回復状態が気になります。

www.afpbb.com

そしてさらに落車はまだ続きます。今度はフルームとニーバリ。
こちらも緩めのコーナーで雨でなければ何でもない箇所ですが、道路の白線に乗った瞬間に前輪を滑らせたフルームが落車。その後ろを走っていたニーバリも巻き込まれてしまいます。
フルームはすぐに立ち上がって走り出そうとしますがどうやらバイクが故障してしまった模様。すぐに近くにいたアシストの中からゲラント・トーマスを選んで、バイクを譲り受けます。(どうやらチームカーは相当遅れており、仕方なく比較的体型の近いゲラント・トーマスのバイクで走る選択をしたようです)
結果的にゴールまでの10km以上をフルームはこのゲラント・トーマスのバイクで走りきることになります。
今大会では第12ステージではマラソンをしたシーンもありましたが、落車後のリカバリーで運のないフルーム。
それでも圧倒的な首位をキープしているのは実力のなせる技ですね。

そしてさらにまだ落車は続きます。今度は総合2位のバウク・モレマ。
アイマル・スベルディアとピーター・ステティーナのアシスト2人と一緒に3人で落車に巻き込まれてしまいます。
この落車もあって、最後の1級を登り単独で走らなければならなくなったモレマ。
結果的にこの落車が響いて今日のステージではトップから4分26秒遅れ……総合順位も2位から一気に10位に落としてしまう結果となります。

さて、この連続して発生した落車の混乱の中、メイン集団から抜け出しのは総合5位につけていたロメン・バルデ。
ミカエル・シェレルのアシストを受けてメイン集団から一気に抜け出します。
そのまま1級の登りに入るとすぐに先頭のルイ・コスタと合流し、またしても強力タッグでの逃げが開始されます。
ピエール・ローランの落車で落胆に暮れていたであろうフランスはこのロメン・バルデの逃げで再び湧き上がったのは間違いないでしょう。

あくまでステージ勝利ではなく総合表彰台を目指してのアタックだったロメン・バルデ。メイン集団がタイム差を詰めてきている状況を見て、残り3.2kmでペースを上げます。
このペースアップであえなくルイ・コスタは遅れてしまいます。(さすがにローランの落車からずっと1人で走り続けてきたわけですから、もう足は残っていなかったのでしょう)
メイン集団の追い上げもかわして、ロメン・バルデはそのまま先頭でゴール。
ついに今大会初めてのフランス人によるステージ優勝となります。
まだ25歳のロメン・バルデですが、既にリタイアしたティボー・ピノと並んでやはりフランス人クライマーの双璧という感じですね。強い。
今日の走りで、総合順位も5位から一気に2位にジャンプアップ。明日の走りも期待です。

今日のステージが終わった時点での総合順位を見てみます。

1 クリス・フルーム スカイ 82h 10' 37''
2 ロメン・バルデ AG2R + 04' 11''
3 ナイロ・キンタナ ヴィスタ + 04' 27''
4 アダム・イェーツ オリカ・バイクエクスチェンジ + 04' 46''
5 リッチー・ポート BMC + 05' 17''

2位以下は引き続き接戦ですね。
総合勢にとっては最終決戦となる第20ステージ。パリの表彰台には一体誰が上るのか。明日の戦いも楽しみです!

フルーム驚異の走りで今大会2勝目:ツール・ド・フランス2016第18ステージ

ツール・ド・フランス2016

今大会2回目の個人タイムトライアル。距離は17kmですが場所はアルプス。細かなアップダウンが連続する山岳タイムトライアルになります。
ジロやブエルタでは度々設定される山岳タイムトライアルですが、ツールでは2004年のラルプ・デュエズ以来ですから12年ぶりの実施となります。


アルプス4連戦の2日目。クリス・フルームの好調ぶりと、チームスカイの圧倒的なアシスト陣の充実が目立ったアルプス初日ですが、今日は個人TT。アシスト陣を巻き込んだ駆け引きは無用の個人TTで、しかも山岳での個人TTですから、フルームと総合上位陣のガチンコの勝負が繰り広げられます。

個人TTというと、第13ステージのトム・デュムランの圧倒的な勝利が思い出されますが、今日の山岳タイムトライアルでもデュムランがTTスペシャリストとしての実力を見せつけるのか、それとも総合上位のクライマーによるフルーム追撃が見られるのか、はたまた今日もフルームが個人でも力を見せつけるのか。コースプロフィール的には様々な展開が想像できるステージです。

しかし残念なことに今日のスタートを前になんとファビアン・カンチェラーラのリタイアという悲報……
まさか個人TTを前にカンチェラーラがツールを去るとは意外ですが、今日のTTよりもリオオリンピックへの可能性に賭けた、ということなので、ここはオリンピックを楽しみにしたいと思います。

個人タイムトライアルは総合タイムの下位からスタートしますから、マイヨジョーヌのフルームは最後の発走となります。

まず強さを発揮したのは今大会の序盤で山岳賞ジャージをまとっていたトーマス・デヘント。
さすがの登坂力を見せつけて、32分を切る好タイムでゴールします。

そして、暫定トップがデヘントのまま、今日の本命の一人、トム・デュムランの発走を向かえます。
厳しい登りを含むコースのため、タイムトライアル仕様のバイクではなく、ノーマルバイクにTTポジション用のアタッチメントを装着してレースに臨む選手が多いなか、デュムランは完全なるタイムトライアルバイクでスタートします。
たしかに最大勾配14パーセントの登りをダンシングもせずにシッティングで乗り越え、TTポジションもほぼ崩さずに走りきれるトム・デュムランにとってはTTバイクの方がこの山岳コースでもパフォーマンスを発揮できるのかしれません。
コース序盤から積極的に踏んで行ったデュムランは最終的にデヘントに40秒の差をつけてゴールします。

デヘントのタイムでもなかなか抜かれなかったところでの40秒差は圧倒的。
「登坂力のあるTTスペシャリスト」としての力量をまたしても見せつけてくれました。

さすがにこのトム・デュムランのタイムはもう抜かれないだろう……
世界中の多くの人が思ったに違いありません。が、最後の最後、最終発走者であるクリス・フルームがやってくれます。

序盤こそデュムランのタイムから遅れたものの、中盤からゴールにかけての踏み込みは驚異的でした。
今日のコースは小刻みなアップダウンを繰り返して最後の2kmは下りというプロフィールですが、どうも見ていると終盤の登りでタイムを落とす選手が多いようでした。
デュムランやリッチー・ポートも序盤での好タイムが目立ったものの、後半はタイムが伸びなかった印象があります。
そんな中「静かに、抑えてスタートした。山頂に向かって力をクレッシェンドしていくためだった」というフルームの狙いはまさに的中。
この辺の周到なシミュレーションに基づく分析はまさにチームスカイの真骨頂かもしれません。

今日の上位陣のリザルトを見てみます。

1 クリス・フルーム スカイ 30' 43''
2 トム・デュムラン ジャイアント・アルペシン + 00' 21''
3 ファビオ・アル アスタナ + 00' 33''
4 リッチー・ポート BMC + 00' 33''
5 ロメン・バルデ AG2R + 00' 42''
6 トーマス・デヘント ロット・ソウダル + 01' 02''
7 ヨン・イサギーレインサウスティ ヴィスタ + 01' 03''
8 ホアキン・ロドリゲス カチューシャ + 01' 05''
9 ルイ・メインチェ ランプレ・メリダ + 01' 08''
10 ナイロ・キンタナ ヴィスタ + 01' 10''

結果、今日もクリス・フルームの圧倒的な「力」を見せつけられたタイムトライアルとなりました。
トム・デュムランがそこまでの暫定トップだったトーマス・デヘントのタイムを40秒差で抜き去った時には完全に「デュムラン強し!」という感じでこのタイムが抜き去られるなどとは想像しなかったわけですが、それを21秒差で塗り替えた最終走者=マイヨジョーヌの力には言葉を失います。
今日を終えての総合タイムを見てみると

1 クリス・フルーム チーム スカイ 77h 55' 53''
2 バウク・モレマ トレック・セガフレード + 03' 52''
3 アダム・イェーツ オリカ・バイクエクスチェンジ + 04' 16''
4 ナイロ・キンタナ ヴィスタ + 04' 37''
5 ロメン・バルデ AG2R + 04' 57''

2位のモレマに4分近いタイム差をつけて残りアルプス2日。
ますますフルーム圧倒的という状況が強まってきましたが、明日明後日といずれも超級山岳が控える難コース。まだもう一波乱あるか!?
明日のツールも楽しみです。

hatenablog.com
jsports-cycle.hatenablog.com

ザカリン初勝利!!:ツール・ド・フランス2016第17ステージ

ツール・ド・フランス2016

2度目の休息日を終え、いよいよアルプス4連戦に突入です。総合優勝争い、山岳賞争いもこの4日で決します。1日たりとも見逃せません。


アルプス4連戦の初日は、3級2つ1級1つを超えての超級ファンオー・エモッソンの山頂ゴール。今年のツールはここまでも山岳続きの厳しいステージが連続していたので、超級山頂ゴールといえど案外凄みを感じないのは私だけでしょうか。

昨日の休息日ですが、ここまでステージ4勝を上げていたマーク・カヴェンディッシュやBMCのTTスペシャリスト、ローハン・デニスがリオ五輪の準備を理由にツールを去りました。
カヴェンディッシュが出場するトラック競技が8/11から、ローハン・デニスが出場する個人TTが8/10ですから、もう3週間後なんですね……
ロード男子が8/7ですからツールの最終日からわずか2週間後。ツールに出場中の有力選手も多数オリンピックに出場するわけですが、ツールを終えて2週間で調整するのですからこれはもう大変ですよね。
日本人ではもちろん新城幸也選手がロード男子に出場予定です。新城選手もこのまま順調に行けば6度目のツール完走を果たして、リオに向けた調整に入るはずです。
今年の大腿骨骨折からの復帰もそうでしたが、驚異的な回復力を発揮してリオでも活躍してくれることを期待します。

さて、今日のレース展開ですが序盤でまず11人の逃げ集団が形成されます。
マイヨ・ヴェールサガン、マイヨ・ア・ポアのマイカ(いずれもティンコフ)、第15ステージの勝者パンタノ、第15ステージは惜しかったザカリン(直近のステージで好調ぶりを見せたメンツですね)、そしてトニー・ギャロパン、ブリース・フェイユーといったフランス人が逃げ集団には含まれます。
追走集団には、アラフィリップやヴォクレールもおり、ここに来てフランス勢の奮闘が目立つように感じられます。

ツール開催国フランスですが、今大会ではここまでフランス人選手のステージ勝利がありません。
このままステージ勝利無しで終わると実に「95年ぶり」とのことで、ここに来てその話題が現地でも増えてきているそうです。
最新のUCI国別ポイントランキングではフランスはスペイン、コロンビアに次ぐ3位と実は好調なわけですが、今ツールでは残念ながら勝利には至っていない。残り5ステージですから俄然フランス人選手のプライドをかけたアタックが随所で見られるかもしれません。
今日もそうですが、ここに来て連日逃げに参加しているアラフィリップ(第15ステージはメカトラに泣いたわけですが)には是非とも結果を出して欲しいし、ロメン・バルデやピエール・ローランといったフランス人クライマーにはアルプスでの奮起に期待したいです。

逃げ集団は淡々と3級山岳2つと中間スプリントポイントを通過していきます。
カヴェンディッシュが去った今、マイヨ・ヴェールサガンが圧倒的ですし、山岳賞もマイカに抜けてきた感があります。
エースであるコンタドールがリタイアした後でも、しっかりチームとしてのプレゼンスを発揮して結果を出すティンコフの力には脱帽です。
一昨日のサガンのステージ勝利の際はオーナーのオレグ・ティンコフさんの歓喜に踊る姿が中継されていましたが、あんなに楽しそうにしてるオーナーがいて、ここまで素晴らしい成果を上げているチームや選手がいて、それでも来季はチーム解散してしまうというのが本当に信じられない気持ちです。ツールのチームプレゼンテーションでも一番楽しそうな雰囲気を感じたのはティンコフだったので余計に残念です。

途中、1級山岳でトニー・ギャロパンとアレクセイ・ルツェンコがアタックしますが、こちらは実らずに1級山岳はマイカが先頭で通過します。そして超級ファンオー・エモッソンの上りへ……
1級山岳のダウンヒルで抜け出したラファル・マイカとハリンソン・パンタノ、そこに超級の登りでイルヌール・ザカリンが追いつきます。

matsunart.hateblo.jp

イカとパンタノの並走……そしてそこにザカリンが絡む
まるで第15ステージの再現というかリベンジ的な展開になってきました。
但し、第15ステージと違うのは今日は山頂ゴールということ。

登りに関してはパンタノが若干劣るのかなぁ、、という印象でしたが、なんと先に遅れだしたのは山岳賞ジャージのマイカ
ザカリンのアタックに全く反応できずにあっという間に遅れてしまいます。(まぁマイカとすれば今日も1級3級と山岳ポイントは順調に積み増しできたので良し…とすることもできるのかもしれませんが、またしてもステージ優勝のチャンスをものに出来ず…)

ザカリンとパンタノ、となるとやはり登坂力はザカリンが優位。
何度かアタックを仕掛けたかと思えば、途中からは一定出力でグイグイ踏み出し、力勝負に打ってでます。
自力の違いを見せつけられた格好で、徐々に差を広げられるパンタノですが、それでも必死にダンシングをしながら食い下がろうとします。(さすが男気のパンタノ!)

とはいえ自力に勝るザカリンが最終的にこのステージをものにして、ツール初勝利!!
ポストフルームのオールラウンダーと評されるザカリンですが、これで昨年のジロに続いてグランツールでは2賞目となります。
先月のジロでの大落車からの復活!
26歳のまだ若いオールラウンダーですから、これからの活躍に益々期待です。

一方の総合争いはというと、今日もまたアスタナが積極的にメイン集団をコントロールし、スカイに一矢報いようという展開。
問題はこれにモビスターがこれまで共闘できていない点ですが、今日も超級に達した地点でメイン集団にはバルベルデとキンタナの2人だけ、という厳しい展開。
今日のスタート前に「モビスターは必ず攻撃する!」とウンスエ監督は豪語していたようですが、、どうもバルベルデ以外のアシストのパフォーマンスが本来のものではなさそうですし、肝心なエースのキンタナも精彩を欠く印象。
今日は辛うじてバルベルデが何度かスカイ勢に対してアタックを仕掛け、アシストを何人か削ることに成功したのが精一杯という感じで、キンタナ自身の攻撃は見られませんでした。

メイン集団からは最終的にリッチー・ポートが抜け出し、それに反応したクリス・フルームが追従するという展開。
今年からスカイを離れBMCへ移籍したリッチー・ポートですが、チームを分かれても尚フルームを牽引する姿は感慨深いものがありました。
ポート、フルームを追うアダム・イェーツ、バルベルデ、ファビオ・アルの追い上げも届かず、ポート、フルームが先着。
キンタナに至ってはイェーツらのグループからもさらに遅れをとり、フルームからは28秒をさらに失う結果となりました。
アルプスでのキンタナの巻き返しが期待されたわけですが、結局はフルームの安定感だけが鮮明になった今日の総合争いでした。

明日はいよいよ山岳での個人TT
TT巧者のフルームがさらにタイムを稼ぐのか、モレマ、イェーツ、キンタナの巻き返しがあるのか。
そしてフランス勢のステージ優勝は残り4ステージで果たせるのか。
各ジャージの行くえはだいぶ見えてきたようにも思えますが、それでもまだまだ見所は盛り沢山のツール。明日も楽しみです!!

hatenablog.com
jsports-cycle.hatenablog.com

果敢に逃げた2人にW敢闘賞!:ツール・ド・フランス2016第16ステージ

ツール・ド・フランス2016

今大会2度目の休息日を翌日に控えた第16ステージは最終21ステージを除くと最後の平坦ステージ。休息日を挟んだ明後日からはアルプス4連戦に入るとあって、今日はスプリンターにとっては是が非でも勝ちたいステージ。
そして今シーズンでの引退を表明しているファビアン・カンチェラーラにとっては地元スイスのベルンがゴールに設定された、まさに引退の花道を飾る凱旋ステージとなります。ここまで目立った活躍のないカンチェラーラがどんな走りをみせるのか見ものです。


4級山岳を1つ含むものの、概ね平凡な平坦ステージ……と思いきや、ラスト2.5kmは勾配6〜7%の坂道が連続する上に、石畳というピュアスプリンターには少々厳し目のステージ。
「登れるスプリンター」「スプリント力のあるパンチャー」によるゴールスプリントか、もしくは「クラシックハンター」によるロングスパートといった決着が予想されます。
前者であれば、ペーター・サガンやジョン・デゲンコルブ、といった名前を挙げられますし、後者であればヴァンアーヴェルマートや、「地元凱旋の」ファビアン・カンチェラーラといった名前が挙げられるでしょうか。
いずれにしても単純なゴールスプリントとはならなそうな本ステージです。

今日逃げを決めたのは、ジュリアン・アラフィリップとトニー・マルティンのエティクス・クイックステップ勢。
昨日のメカトラブルで苦渋をなめたアラフィリップがその鬱憤を晴らすように逃げに逃げます。
トニー・マルティンにしても今大会ではここまで目立った活躍がなかったので、今日の逃げには気合いが入ります。
2人の逃げは残り100km地点から残り25km地点までのおよそ75km余り。

平坦コースでしかも2人キリの逃げで75km余りを逃げ続けたアラフィリップとトニー・マルティンの2人の執念には見ている方も思わず応援したくなる気迫があります。
結果、今日の敢闘賞はなんとアラフィリップとトニー・マルティンの2人に与えられる例外措置!
逃げのうち7〜8割はマルティンが引いていたように思いますし、最後の最後まで逃げ続けたのもマルティンなのでマルティンに敢闘賞かな……と思っていたわけですが、まさか2人に授与とは!!
ひょっとしたら今日の走りに加え「前日のメカトラのリベンジに燃えるアラフィリップ」というストーリーも込みでの2人受賞ということだったのかもしれません。

残り25kmでアラフィリップを、残り23kmでマルティンを吸収したメイン集団はその後ルイ・コスタが逃げる瞬間もありましたが、最終の石畳区間までにルイ・コスタも吸収され、メイン集団がそろって石畳に突入という状況。

石畳で且つ上りの連続で、コーナーも多くテクニカル、、という幾重にも難しさが折り重なったような市街地コースで集団は徐々に絞りこまれていきます。

そんな中、いい位置でゴールスプリントに辿りついたのは、アレクサンドル・クリストフとペーター・サガンというクラシック巧者なスプリンターの2人。
その後方には前日も4位と徐々に復活しつつあるジョン・デゲンコルブや地元でのステージ勝利を狙うファビアン・カンチェラーラが続きます。

ゴールスプリントでは積極的に前に出るクリストフとその後方に張り付くサガン、という構図。
スプリントの流れ的にはクリストフがそのまま行ってしまいそうな気配もあったものの、最後の最後でゴールにバイクを投げ出したサガンの数cm差の勝利。
去年あれだけ勝てずに2位が続いていたサガンはどこへ行った??と言いたくなるようなステージ勝利の連続(既に今年はステージ3勝)
昨年、世界チャンピオンになり、結婚もしたことで特にメンタルでの強さや、運をたぐり寄せる「引き」の強さが出てきたのかなぁ、と想像。

明日の休息日を明けると明後日からはいよいよツールも最後の難関、アルプス4連戦へと突入します。
いよいよ総合争いも最終盤となり、フルーム、スカイ勢にライバル各チームがどのような攻撃を繰り出していくのか。
これまで圧倒的な強さをみせているスカイですが、そこはツール・ド・フランスのこと、「何が起こるかは分かりません。」
予想外の展開でアルプスステージが盛り上がることを期待します。

hatenablog.com
jsports-cycle.hatenablog.com

パンタノ男気のダウンヒル勝利!!:ツール・ド・フランス2016第15ステージ

ツール・ド・フランス2016

超級1つ、1級2つ、2級1つに3級2つ……等級がついている山岳だけでも6つの山岳を超える難関ステージ。終盤に位置する超級と1級のダウンヒルも見どころとなりそうです。


今日のステージを終盤までリードしたのは、山岳賞を目指すラファル・マイカと、ジロでの大落車から復活したイルヌール・ザカリンの2人。
最初の1級山岳を前に抜け出した2人。(最初の1級はマイカがトップ通過し山岳ポイントを獲得していきます。)
その後、ヴィンチェンツォ・ニーバリが引く追走集団に吸収されるものの、終盤の超級を前に再度マイカ、ザカリンの2人が抜け出します。

www.cyclowired.jp

衝撃的な落車でリタイアしたジロから、鎖骨と肩甲骨の骨折を治して復活したザカリン。あまりに酷い落車だったのでてっきりツールには間に合わないだろうと思っていたら、しっかり治して、しかもツールでステージ優勝争いをしている……
新城幸也しかり、デゲンコルブしかり、一流選手の驚異的な回復力は常人の理解を超えるとというか、そうした回復力なくして、グランツールは戦えないんだなぁ、と感じます。

超級グラン・コロンビエをトップで通過したマイカ、ザカリンですが、山頂通過後のダウンヒルでジュリアン・アラフィリップ、ハリンソン・パンタノの2人が一気に差を詰め、マイカに追いつきます。
一方でザカリンはダウンヒルで今一つスピードが出せずに一人遅れてしまいます。(やはりジロのダウンヒルで落車したイメージが残っているのでしょうか……*1

今日のダウンヒルでおそらく一番早かったのはジュリアン・アラフィリップ。今大会序盤ではマイヨ・ブランを着用し、フランスの期待を担うヤングライダーですが、中盤以降は調子を崩し精彩を欠いていましたが、今日は攻める攻める攻める。
超級グラン・コロンビエのダウンヒルではマイカ、パンタノを寄せ付けずあっという間に差を広げていきます。(これが若さ故の恐れ知らずというか、なんというか)
上りの追走でも一人テンポの違う上りを見せていたアラフィリップでしたから、このまま逃げ切ってしまうのか!?とも思えました。

が、あれ、アラフィリップが止まってる!!
残念すぎるメカトラブルでした。せっかくダウンヒルで置き去りにしたマイカ、パンタノに抜かれ、遅れていたザカリン、ヴュイエルモーズらのグループにも抜かれてしまいます(およそ1分半のロス……痛恨です。)
この後タイム差を詰めて、最終的にはトップから22秒遅れの5位だったことを考えると、本当に「痛恨のメカトラブル」でした。

アラフィリップのメカトラブルもあってトップに出たマイカ、パンタノは揃って最後の1級山岳にかかります。
今日ここまでのダウンヒルではパンタノがマイカを上回っている印象。案の上、山頂を前に早々にマイカはアタックをかけます。
山頂でのパンタノとのタイム差はおよそ20秒……
これまたあっという間でした。ダウンヒルに入るとみるみるマイカとパンタノの差は詰まり、下りきる手前で完全にマイカを捉えます。(マイカダウンヒルも決して遅くはなかったはずで、パンタノのダウンヒルが凄かったという感じ。)

ダウンヒルはもちろんテクニックの差もあるのですが、よく言われるのはメンタルの差(というかどこまで恐怖心を律することができるか)ということ。
今日のマイカとパンタノでいうと、すでにツール勝利経験もあり、且つ今日だけで山岳ポイントを50ポイントも獲得して大きく山岳賞を手繰り寄せたマイカと、一方でツールではもちろんまだ勝利なく、コロンビア出身のハングリーさのあるパンタノの方がモチベーションの点でマイカを上回っていたのかもしれません。それがダウンヒルの差となり、ゴールスプリントでの「執着」の差として表れたのかもしれません。
(もちろん山岳ポイントを獲得するためにマイカが相当に足を使っていたということもあります)

コロンビア旋風と言われて久しいロードレース界ですが、今日また新たなコロンビアのヒーローが誕生しました。
ハリンソン・パンタノ。本当に執念というか気持ちでステージ勝利を勝ち取りましたね。

一方のコロンビアヒーローの本命、ナイロ・キンタナは今日も目立ったアタックはなく……
総合争いではティージェイ・ヴァンガーデレンがタイムを失った以外は大きな展開はありませんでした。
今日は既に総合争いからは後退したアスタナがなぜかメイン集団を牽引する動き。アスタナの引きでスカイのアシスト陣が若干削られる展開はあったものの、そこに乗じてのモビスターの攻撃はバルベルデが散発的にアタックを仕掛けたのみ。
キンタナの調子が今ひとつ上がらないように見えるモビスターですが、アルプスでは何か起きるのか。キンタナのとフルームのタイム差はおよそ3分。フルームの調子が良いだけに、これから3週目でどんな展開が待っているのか。個人的にはもう一波乱を期待してしまいます。

hatenablog.com
jsports-cycle.hatenablog.com

*1:レース後のインタビューでは「片方のコンタクトレンズが外れたんだ」との本人コメントがありました。コンタクト片目でダウンヒル走るとかこれもまた驚き!

カヴェンディッシュ4勝目!!:ツール・ド・フランス2016第14ステージ

ツール・ド・フランス2016

連日厳しい戦いが続き、アクシデントにも見舞われた今大会ですが、今日は平和なレース展開が期待できそうな4級山岳3つを含む208.5kmの平坦ステージです。


連日強風に見舞われているツールですが、今日も風は強め。一見平凡な平坦ステージに見えますが、横風分断を狙った駆け引きもありそうで気は抜けないか……

と思ったのも結局は杞憂で、今日の風はほぼ向かい風……途中のわずかにあった横風区間でスカイの牽引などによって集団が縦長になったり、小さな分断は起きたものの、おおよそメイン集団にとっては「平和」な1日として終わりました。
全21ステージの間で休息日はわずか2日(数年前までは1日しかなった……)3週間にわたって連日150〜200kmを走るわけですから、途中に幾つか「やさしめのステージ」もあるべきですよね。

特に近年のツールでは有力チームによる厳しい「位置取り争い」があったり、単純な平坦ステージでもなかなか気を緩められるステージが減ってしまっているように思えます。
殊に、今年のツールは序盤から難しいステージが続き、観ている側からしたら毎日激しいレースが観られて面白い反面、選手にとっては消耗も激しいでしょうしバランスは難しいですよね。

序盤で難しいステージが多かったわりにリタイアが少ない……という声が上がっていた今大会ですが、さすがに第13ステージを終え中盤も過ぎるとリタイアする選手も増えてきています。

ここまででリタイアした主な選手を挙げると……

など。
コンタドール、ティボ・ピノのリタイアは特に残念ですね。そしてこの2人は結局オリンピックにも出場しないようで、それもまた残念なニュース……
トニー・マルティンファビアン・カンチェラーラと、マイヨ・ジョーヌのリタイアが相次いだ昨年のツールに比べると今年は随分リタイアが少ないのはやはり印象としてありますし、残りステージでも激しい戦いは期待しますが、一方でリタイアによって勝利が決してしまうような結果は見たくありませんので、このまま順調に今後のステージが進行していくことを望みます。

さて、今日のレース状況に話を戻しますと、上述したようにメイン集団での大きな動きはなく、逃げも少人数のグループの無難な逃げに終わり、結果としては予想通りのピュアスプリンターによるゴールスプリントに雪崩れ込む展開。

ゴール前2〜3kmはエティクス・クイックステップ、カチューシャ、ディメンションデータといった有力チームがそれぞれトレインを組んでゴールスプリントに備えた位置取り争いを繰り広げます。今日誕生日を迎えたアンドレ・グライペルも集団前方の位置をキープ。久々に綺麗なゴールスプリントで迫力が凄い!!

ラスト300m、アシストから発射されたキッテルがスパート。カヴェンディッシュはキッテルの後方に着け、グライペル、クリストフ、サガンらが反応します。そして今回のスプリントにはここまで活躍のなかったジョン・デゲンコルブの姿も!!

ラスト300mでのスパートはキッテル若干早いか……という印象でしたが、ラスト150mでキッテルを交わして先頭に立ったカヴェンディッシュが今大会4勝目!!(完全に勝利量産体制…といった感じになってきました)
極端に低い姿勢で踏み込み、最後の最後にライバルを交わして勝利するカヴェンディッシュらしい切れ味鋭いスプリントが戻ってきた今大会はスプリントの面白みも増したように個人的には感じます。

そして今日嬉しかったのはこれまで怪我の影響もあって活躍のなかったジョン・デゲンコルブが4位に食い込んできたこと!

www.cyclowired.jp

この事故によって、あわや左手人差し指を欠損…というような負傷を負ったデゲンコルブ。
今も指はほぼ曲がらない状態らしいですが、それでも勝負を続けるデゲンコルブの姿は本当に胸を熱くさせてくれます。

さて、明日からはまた厳しい山岳ステージに突入します。
フルームがこのまま優勝をたぐり寄せていくのか、ナイロ・キンタナ擁するモビスターがどんな攻撃をスカイに仕掛けていくのか、或いはアダム・イエーツのさらなる進化を目にすることができるのか。これから終盤の戦い…ますます目が離せません!!

hatenablog.com
jsports-cycle.hatenablog.com

圧勝トム・デュムラン!個人TTの結果:ツール・ド・フランス2016第13ステージ

ツール・ド・フランス2016

今大会で2回設定されている個人タイムトライアルの1回目。37.5kmと長めのコースでアップダウンもあり、TTスペシャリストとオールラウンダーのステージ優勝争いが見られそうです。


個人TTなので、トニー・マルティンファビアン・カンチェラーラ、ヴァシル・キリエンカといった歴代TTチャンピオンのいずれかがこのステージを制するのか、TT巧者のオールラウンダー、クリス・フルームやヴィンチェンツォ・ニーバリが上り区間で優位性を発揮するのか、ステージ優勝の行方がまず気になるところ。
それでいうと個人的に圧倒的に押したいが、トム・デュムラン。
今大会でも第9ステージを制して、調子も良さそうですし、去年のブエルタで開花した「クライマー」としての強さも今日のコースには向いているように見えます。

さて、解説や感想を後回しにして、先に本ステージの主要選手のリザルトを見てしまいます。

1 トム・デュムラン 50' 15''
2 クリス・フルーム + 01' 03''
3 ネルソン・オリヴェイラ + 01' 31''
4 ジェローム・コッペル + 01' 35''
5 ローハン・デニス + 01' 41''
6 バウク・モレマ + 01' 54''
7 ゲラント・トーマス + 02' 00''
8 ヨン・イサギーレインサウスティ + 02' 02''
9 トニー・マルティン + 02' 05''
10 ティーブ・カミングス + 02' 24''
13 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン + 02' 34''
15 アレハンドロ・バルベルデ + 02' 48''
16 ティージェイ・ヴァンガーデレン + 02' 50''
18 アダム・イェーツ + 03' 01''
20 ナイロ・キンタナ + 03' 08''
21 リッチー・ポート + 03' 08''
23 ファビアン・カンチェラーラ + 03' 15''
25 ヴィンチェンツォ・ニーバリ + 03' 29''
37 ファビオ・アル + 04' 25''


まず何と言っても目立ったのは、トム・デュムランの圧倒的な強さ!
2位のフルームに1分以上の差をつけての勝利は異次元の強さと言っても良いかと思います。
そもそも2014年の世界TTでは3位に入ってますし、今日もオランダチャンピオンジャージを着ての走りですから、現役でも屈指のTTスペシャリストであることは言うまでもありません。それに加えて近年の登坂力の向上、勝負強さは目を見張るものがあります。
個人的にはグランツールの総合優勝を目指すような選手に進化していって欲しい、最も期待する「次世代の主役」と思っています。

次にファビアン・カンチェラーラトニー・マルティンが全くと言っていいほどに奮わなかった点も印象的でした。
かつて圧倒的な強さを見せたファビアン・カンチェラーラも今年で現役引退……
昨年はマイヨ・ジョーヌを獲得する「強さ」を見せたカンチェラーラも、引退表明後の今大会ではここまで見せ場もなく、淡々と走っている印象。
今日のタイムトライアルでは何かを見せてくれるのでは、と期待もしましたが、結果はトップから3分以上遅れての23位と寂しい結果に終わってしまいました。
一方のトニー・マルティンも今大会ではここまで見せ場なく、今日もトップから2分遅れの9位。
これまでのステージで落車もありましたし、やはり本調子ではないのかもしれません。
こちらは今年のオリンピックでの復活を期待して待ちたいと思います。

総合争いは……というと、結果的にはまたしてもクリス・フルームのステージでしたね。
トム・デュムランからは1分遅れたものの、それでもステージ2位。総合優勝を争う、アダム・イェーツやナイロ・キンタナには2分のタイム差を稼ぐことになりました。
昨日の「事件」があっても尚、この強さ。やはり凄い選手です。

一方のアダム・イェーツやナイロ・キンタナの立場から見た場合は「2分差で済んだのでOK」という考え方もできるかもしれません。タイム差は別としてアダム・イェーツがステージ18位、ナイロ・キンタナがステージ20位と、不得手であるはずの個人タイムトライアルでのこの結果は2人にとっては「上々の出来」ともいえるかもしれません。

クリス・フルーム優位という状況になってきたものの、まだまだツールも中盤。今後のアダム・イェーツやナイロ・キンタナの後半戦での「攻撃」に期待したいと思います。

余談:
前日のニースでの事件を受けて、今日の表彰式では各選手共に喪章を着けてのセレモニーとなりました。
レース前の選手インタビューでも多くの選手が事件に触れ、複雑な心境を述べています。
近年、ロードレースもアフリカ系やアジア系の選手が増えてきたり、ますますワールドワイドなスポーツに拡大しつつあります。ロードレースは国籍や人種や宗教の差もなく、皆ゴールを目指して時にはチームの垣根さえも超えて協力していく「理性的であり紳士的なスポーツ」です。
様々は背景を持つ選手が協力して走る姿に我々は感動を貰っています。暴力によってそうした感動が阻害されることはあってはならない。大会関係者、選手、各チーム関係者が一丸となってツールを続行し運営されていることに感謝し、これからも全力で応援したいと思います。

hatenablog.com
jsports-cycle.hatenablog.com