今大会で2回設定されている個人タイムトライアルの1回目。37.5kmと長めのコースでアップダウンもあり、TTスペシャリストとオールラウンダーのステージ優勝争いが見られそうです。
個人TTなので、トニー・マルティン、ファビアン・カンチェラーラ、ヴァシル・キリエンカといった歴代TTチャンピオンのいずれかがこのステージを制するのか、TT巧者のオールラウンダー、クリス・フルームやヴィンチェンツォ・ニーバリが上り区間で優位性を発揮するのか、ステージ優勝の行方がまず気になるところ。
それでいうと個人的に圧倒的に押したいが、トム・デュムラン。
今大会でも第9ステージを制して、調子も良さそうですし、去年のブエルタで開花した「クライマー」としての強さも今日のコースには向いているように見えます。
さて、解説や感想を後回しにして、先に本ステージの主要選手のリザルトを見てしまいます。
1 | トム・デュムラン | 50' 15'' |
---|---|---|
2 | クリス・フルーム | + 01' 03'' |
3 | ネルソン・オリヴェイラ | + 01' 31'' |
4 | ジェローム・コッペル | + 01' 35'' |
5 | ローハン・デニス | + 01' 41'' |
6 | バウク・モレマ | + 01' 54'' |
7 | ゲラント・トーマス | + 02' 00'' |
8 | ヨン・イサギーレインサウスティ | + 02' 02'' |
9 | トニー・マルティン | + 02' 05'' |
10 | スティーブ・カミングス | + 02' 24'' |
13 | エドヴァルド・ボアッソンハーゲン | + 02' 34'' |
15 | アレハンドロ・バルベルデ | + 02' 48'' |
16 | ティージェイ・ヴァンガーデレン | + 02' 50'' |
18 | アダム・イェーツ | + 03' 01'' |
20 | ナイロ・キンタナ | + 03' 08'' |
21 | リッチー・ポート | + 03' 08'' |
23 | ファビアン・カンチェラーラ | + 03' 15'' |
25 | ヴィンチェンツォ・ニーバリ | + 03' 29'' |
37 | ファビオ・アル | + 04' 25'' |
まず何と言っても目立ったのは、トム・デュムランの圧倒的な強さ!
2位のフルームに1分以上の差をつけての勝利は異次元の強さと言っても良いかと思います。
そもそも2014年の世界TTでは3位に入ってますし、今日もオランダチャンピオンジャージを着ての走りですから、現役でも屈指のTTスペシャリストであることは言うまでもありません。それに加えて近年の登坂力の向上、勝負強さは目を見張るものがあります。
個人的にはグランツールの総合優勝を目指すような選手に進化していって欲しい、最も期待する「次世代の主役」と思っています。
次にファビアン・カンチェラーラやトニー・マルティンが全くと言っていいほどに奮わなかった点も印象的でした。
かつて圧倒的な強さを見せたファビアン・カンチェラーラも今年で現役引退……
昨年はマイヨ・ジョーヌを獲得する「強さ」を見せたカンチェラーラも、引退表明後の今大会ではここまで見せ場もなく、淡々と走っている印象。
今日のタイムトライアルでは何かを見せてくれるのでは、と期待もしましたが、結果はトップから3分以上遅れての23位と寂しい結果に終わってしまいました。
一方のトニー・マルティンも今大会ではここまで見せ場なく、今日もトップから2分遅れの9位。
これまでのステージで落車もありましたし、やはり本調子ではないのかもしれません。
こちらは今年のオリンピックでの復活を期待して待ちたいと思います。
総合争いは……というと、結果的にはまたしてもクリス・フルームのステージでしたね。
トム・デュムランからは1分遅れたものの、それでもステージ2位。総合優勝を争う、アダム・イェーツやナイロ・キンタナには2分のタイム差を稼ぐことになりました。
昨日の「事件」があっても尚、この強さ。やはり凄い選手です。
一方のアダム・イェーツやナイロ・キンタナの立場から見た場合は「2分差で済んだのでOK」という考え方もできるかもしれません。タイム差は別としてアダム・イェーツがステージ18位、ナイロ・キンタナがステージ20位と、不得手であるはずの個人タイムトライアルでのこの結果は2人にとっては「上々の出来」ともいえるかもしれません。
クリス・フルーム優位という状況になってきたものの、まだまだツールも中盤。今後のアダム・イェーツやナイロ・キンタナの後半戦での「攻撃」に期待したいと思います。
余談:
前日のニースでの事件を受けて、今日の表彰式では各選手共に喪章を着けてのセレモニーとなりました。
レース前の選手インタビューでも多くの選手が事件に触れ、複雑な心境を述べています。
近年、ロードレースもアフリカ系やアジア系の選手が増えてきたり、ますますワールドワイドなスポーツに拡大しつつあります。ロードレースは国籍や人種や宗教の差もなく、皆ゴールを目指して時にはチームの垣根さえも超えて協力していく「理性的であり紳士的なスポーツ」です。
様々は背景を持つ選手が協力して走る姿に我々は感動を貰っています。暴力によってそうした感動が阻害されることはあってはならない。大会関係者、選手、各チーム関係者が一丸となってツールを続行し運営されていることに感謝し、これからも全力で応援したいと思います。