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波乱のモン・ヴァントゥ:ツール・ド・フランス2016第12ステージ

ツール・ド・フランス2016

魔の山」モン・ヴァントゥの頂上ゴールが設定された第12ステージ。フランス革命記念日とあって、フランス勢の活躍が気になるステージです。


今日の「あの事件」は後で触れます……

まずは天候の話。前日のステージから強風で荒れ模様だったツールですが、今日のモン・ヴァントゥ山頂もやはり荒れていました。
最大で時速110kmの猛烈な突風が吹きすさぶ山頂のゴールはさすがに安全を考慮して、その手前6km地点に急遽ゴールが設定し直されます。(これが「あの事件」の原因の一端ともなってしまったわけですが……)

レースは「6km短くなったモン・ヴァントゥのゴール」を目指して10人以上の逃げ集団が形成され、最大で19分もの差をつけることに成功します。
メイン集団はというと昨日と同様に強風を活かしての横風分断を狙ったエティックス・クイックステップなどのアタックが仕掛けられ、徐々に人数を減らしていきます。結果、逃げグループとのタイムは一時7分差まで詰まります。(このタイム差なら最後の上りを考えると逃げきりは厳しいか……)
そんな中、残り35km地点でスカイのアシスト数人を巻き込んだ落車が発生します。
さすがにフルームもここでアシストが離脱するのは避けたい……自ら下がってチームメイトを集団に引き上げます。
結果、集団としても(道義的に)マイヨ・ジョーヌを置き去りにするわけにもいかず、フルームの集団復帰を待ちます。
そんなこんなしているうちに結果的に逃げ集団の逃げきりの確率が一気に上がります。

モン・ヴァントゥの上りを前に逃げ集団で最初に動いたのはアンドレ・グライペルでした。
世界屈指のスプリンターも今日はチームメイト、トーマス・デヘントのためにアシストに徹して走ります。
逃げグループから先行して、逃げグループのライバルに攻撃を仕掛けます。
年々「上れるスプリンター」としての評価が高まるグライペルですが、この上り区間でエースのアシストを務めるとは、驚きです。

グライペルのアシストもあってか、モン・ヴァントゥの上りに差し掛かったところでまずアタックをかけたのはトーマス・デヘント。
そこにダニエル・ナバーロとセルジュ・パウエルスが続きます。
途中、ナバーロとパウエルスに先行を許すものの、しっかりとペースを刻んで足を温存したデヘント。
残り5kmで先行する2人を捉え、最後の100mでは猛烈なスパートをかけ勝利!!
ステージ優勝と山岳ジャージ、さらには敢闘賞にモン・ヴァントゥ覇者の称号までを手に入れたトーマス・デヘント。
デヘントにとっては選手生活で最高の1日となったのは間違いないですね。(いや、しかし今日のデヘントは強かった。)

さて、逃げ集団を結局捉えきれなかったメイン集団ですが、総合の有力選手の間では熾烈な争いが繰り広げられます。
まず攻撃を仕掛けたのはアレハンドロ・バルベルデ。単独でアタックを仕掛け、チームスカイのアシスト陣を削りにかかります。
そしてバルベルデが集団に戻ると間髪入れずに今度はナイロ・キンタナが攻撃に出ます。
しかし、今日のキンタナのアタックには切れ味が足らず、決定的なアタックにはなりません。
そんなモビスターの攻撃をかわすと、今度はなんとフルーム自らが単独でアタックに出ます。そしてこのアタックが威力絶大!!
全くキンタナは着いていけず、フルームのアタックに追従できたのはバウク・モレマとリッチー・ポートの2人だけ。

キンタナが来れないと見るや、フルームはまた一段ギアを上げます。凄い迫力で登っていくフルーム、モレマ、ポート。
残り距離を考えるとこのまま3人が逃げて、今日もまたフルームがタイムを稼ぐのか……と思った矢先でした。
『あれ??落車??』しかもどうやら落車はこのアタックしたフルームグループらしい??
しかし、なかなか映像はフルームを捉えることが出来ません…… どうも観客が多すぎてカメラが辿りつけないらしい…一体どうなってるだ!?

そして、ようやくカメラがフルームを捉えます。

え?え??えええ???

なぜ、マイヨ・ジョーヌが走っている?バイクはどうした?一体何があったのか??

www.cyclowired.jp

うわー、まじか
冒頭でも書いたように、今日のモン・ヴァントゥは強風のため急遽ゴールが6km手前に移動となりました。
結果、本来はゴール手前2〜3kmに随所で設置されるはずだった観客を制限するためのフェンスはほとんど設置されず、しかもゴールまでの区間が短縮されたことで予想以上の観客がゴール手前の数kmに渡って溢れていました。
そんな中、観客に進路を塞がれて急停止したカメラバイクにモレマ、ポート、フルームが相次いで追突…… 結果、フルームのバイクは故障。代わりのバイクに乗り換えるにもサポートカーも観客に阻まれて待てども来ず。いてもたってもいられずにフルームは自分の足で走り出した……というのが上記の光景でした。

観客にぶつかって落車……という事故は最近のロードレースでは時折見かけるものですが、今日のように観客に完全にコースを阻まれるような状況や、ましてやマイヨ・ジョーヌがバイクにも乗れずに走りだす姿などは想像も及ばないような異常な光景でした。
結果的にはこの事故によるロスがタイムに影響出ないように裁定が下ったものの、明日以降の走りに影響ないか心配です。


しかし、この状況でもレースを捨てず、怒りを露わにすることもなく、マイヨ・ジョーヌらしく毅然と走りきったクリス・フルームは本当に偉大な選手だと再認識されられました。

Still in the #YellowJersey

この状況でもジョークをツイートできる精神力にも脱帽です。
明日は37.5kmの個人タイムトライアル。総合争いでも重要なステージが連日続きます。
この精神力でクリス・フルームが明日どんな走りを見せるのか、楽しみです。

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