今大会2回目の個人タイムトライアル。距離は17kmですが場所はアルプス。細かなアップダウンが連続する山岳タイムトライアルになります。
ジロやブエルタでは度々設定される山岳タイムトライアルですが、ツールでは2004年のラルプ・デュエズ以来ですから12年ぶりの実施となります。
アルプス4連戦の2日目。クリス・フルームの好調ぶりと、チームスカイの圧倒的なアシスト陣の充実が目立ったアルプス初日ですが、今日は個人TT。アシスト陣を巻き込んだ駆け引きは無用の個人TTで、しかも山岳での個人TTですから、フルームと総合上位陣のガチンコの勝負が繰り広げられます。
個人TTというと、第13ステージのトム・デュムランの圧倒的な勝利が思い出されますが、今日の山岳タイムトライアルでもデュムランがTTスペシャリストとしての実力を見せつけるのか、それとも総合上位のクライマーによるフルーム追撃が見られるのか、はたまた今日もフルームが個人でも力を見せつけるのか。コースプロフィール的には様々な展開が想像できるステージです。
しかし残念なことに今日のスタートを前になんとファビアン・カンチェラーラのリタイアという悲報……
まさか個人TTを前にカンチェラーラがツールを去るとは意外ですが、今日のTTよりもリオオリンピックへの可能性に賭けた、ということなので、ここはオリンピックを楽しみにしたいと思います。
個人タイムトライアルは総合タイムの下位からスタートしますから、マイヨジョーヌのフルームは最後の発走となります。
まず強さを発揮したのは今大会の序盤で山岳賞ジャージをまとっていたトーマス・デヘント。
さすがの登坂力を見せつけて、32分を切る好タイムでゴールします。
そして、暫定トップがデヘントのまま、今日の本命の一人、トム・デュムランの発走を向かえます。
厳しい登りを含むコースのため、タイムトライアル仕様のバイクではなく、ノーマルバイクにTTポジション用のアタッチメントを装着してレースに臨む選手が多いなか、デュムランは完全なるタイムトライアルバイクでスタートします。
たしかに最大勾配14パーセントの登りをダンシングもせずにシッティングで乗り越え、TTポジションもほぼ崩さずに走りきれるトム・デュムランにとってはTTバイクの方がこの山岳コースでもパフォーマンスを発揮できるのかしれません。
コース序盤から積極的に踏んで行ったデュムランは最終的にデヘントに40秒の差をつけてゴールします。
デヘントのタイムでもなかなか抜かれなかったところでの40秒差は圧倒的。
「登坂力のあるTTスペシャリスト」としての力量をまたしても見せつけてくれました。
さすがにこのトム・デュムランのタイムはもう抜かれないだろう……
世界中の多くの人が思ったに違いありません。が、最後の最後、最終発走者であるクリス・フルームがやってくれます。
序盤こそデュムランのタイムから遅れたものの、中盤からゴールにかけての踏み込みは驚異的でした。
今日のコースは小刻みなアップダウンを繰り返して最後の2kmは下りというプロフィールですが、どうも見ていると終盤の登りでタイムを落とす選手が多いようでした。
デュムランやリッチー・ポートも序盤での好タイムが目立ったものの、後半はタイムが伸びなかった印象があります。
そんな中「静かに、抑えてスタートした。山頂に向かって力をクレッシェンドしていくためだった」というフルームの狙いはまさに的中。
この辺の周到なシミュレーションに基づく分析はまさにチームスカイの真骨頂かもしれません。
今日の上位陣のリザルトを見てみます。
1 | クリス・フルーム | スカイ | 30' 43'' |
---|---|---|---|
2 | トム・デュムラン | ジャイアント・アルペシン | + 00' 21'' |
3 | ファビオ・アル | アスタナ | + 00' 33'' |
4 | リッチー・ポート | BMC | + 00' 33'' |
5 | ロメン・バルデ | AG2R | + 00' 42'' |
6 | トーマス・デヘント | ロット・ソウダル | + 01' 02'' |
7 | ヨン・イサギーレインサウスティ | モヴィスター | + 01' 03'' |
8 | ホアキン・ロドリゲス | カチューシャ | + 01' 05'' |
9 | ルイ・メインチェス | ランプレ・メリダ | + 01' 08'' |
10 | ナイロ・キンタナ | モヴィスター | + 01' 10'' |
結果、今日もクリス・フルームの圧倒的な「力」を見せつけられたタイムトライアルとなりました。
トム・デュムランがそこまでの暫定トップだったトーマス・デヘントのタイムを40秒差で抜き去った時には完全に「デュムラン強し!」という感じでこのタイムが抜き去られるなどとは想像しなかったわけですが、それを21秒差で塗り替えた最終走者=マイヨジョーヌの力には言葉を失います。
今日を終えての総合タイムを見てみると
1 | クリス・フルーム | チーム スカイ | 77h 55' 53'' |
---|---|---|---|
2 | バウク・モレマ | トレック・セガフレード | + 03' 52'' |
3 | アダム・イェーツ | オリカ・バイクエクスチェンジ | + 04' 16'' |
4 | ナイロ・キンタナ | モヴィスター | + 04' 37'' |
5 | ロメン・バルデ | AG2R | + 04' 57'' |
2位のモレマに4分近いタイム差をつけて残りアルプス2日。
ますますフルーム圧倒的という状況が強まってきましたが、明日明後日といずれも超級山岳が控える難コース。まだもう一波乱あるか!?
明日のツールも楽しみです。