「シネマライズ閉館」というニュースは、個人的にあまりにも衝撃的でした。
ミニシアターブームを牽引し、渋谷カルチャーの一翼を担ってきた劇場がついに終焉を迎える。
特に20代前半の多くの時間を映画に費やし、渋谷をいわばホームとしてきた自分には本当にショックなニュースでした。
この機会にシネマライズの思い出を書き残そうと思い、シネマライズ オフィシャルサイト を頼りに、記憶を遡ってシネマライズで観た作品を全て書き出してみました。
書き出してみて、気づいたこと、思い出した記憶を幾つか挙げてみます。
- 「トレインスポッティング」の鮮烈な記憶
- 中越地震に遭遇した「恋の門」
- ソフィア・コッポラやコーエン兄弟やミシェル・ゴンドリーなどなど
- 2009年から2013年にかけての空白の5年間
「トレインスポッティング」の鮮烈な記憶
1997年なので私が21歳。大学2年のときですね。
とにかく「トレインスポッティング」を見終えて、劇場の外に出たときの高揚感を今でも鮮明に覚えています。(別に作中のようにドラッグが……ってわけではなく)
渋谷の街を歩きながら、ずっと「Born Slippy」がループしていました。
ちなみにダニー・ボイル作品は「シャロウ・グレイブ」と「トレインスポッティング」の最初の2本は完全に好きな作品で、その後の作品は個人的にはあまり刺さりませんでした。(それでも「普通じゃない」「ザ・ビーチ」「スラムドッグ$ミリオネア」あたりは一応観てはいます。)
中越地震に遭遇した「恋の門」
映画館で映画を観るのが好きで、足繁く劇場に通っていた20代ですが、その中でも特に記憶に残っているのが2004年の中越地震です。
「恋の門」のたぶん中盤くらいだったかと思います。ちょうどシーン的にも盛り上がっているところで、揺れ始めの瞬間は何か起きたのか分からなかった記憶があります。
わりと作品に没頭していたせいかもしれませんが、地震という感じはしなくて、なんとなく映画の中の世界が揺れているような、そんな錯覚を感じたような気もします。
おそらく東京は震度4くらいの揺れだったかと思いますが、後にも先にも、映画を観てる間にあれほど揺れたことはなかったと思います。作品そのものよりも地震に遭遇した、ということが深く印象に残っています。
ソフィア・コッポラやコーエン兄弟やミシェル・ゴンドリーなどなど
後述のとおり「ヴァージン・スーサイズ」を観たのもやはりシネマライズでした。
当時、東北新社にいた友人が初めて宣伝に携わったのが「ヴァージン・スーサイズ」で、その友人の勧めで出会ったのがソフィア・コッポラでした。
正直「ヴァージン・スーサイズ」に関しては、今でもいまいち理解しきれない作品です。(実は東北新社の友人もこの作品をどう捉えるべきか悩んでいるようでした)
その後「ロスト・イン・トランスレーション」に出会わなければソフィア・コッポラは私にとってただ"F・F・コッポラの娘"という位置付けに収まっていたかもしれません。
「監督」で観る作品を選ぶことの多い私ですが、シネマライズではこのソフィア・コッポラもそうですし、コーエン兄弟、ミシェル・ゴンドリーといった大好きな監督と出会い、その作品と交流した貴重な場でもあったと思います。
2009年から2013年にかけての空白の5年間
これはあらためて振り返って気づいた点ですが、2008年の「僕らのミライへ逆回転」から2014年の「her/世界でひとつの彼女」までの実に5年間、私はシネマライズから遠ざかっていたのですね。
この間に何かあったのかといえば、2009年6月に結婚して、目黒に引っ越しのが大きかったのだと思います。
結婚してからも映画は引き続き観ていました。が、目黒に引っ越してからは専ら品川の「プリンスシネマ」で映画を観るのがほとんどで、渋谷で映画を観ることはほとんど無かったのですね。
品川プリンスシネマがいろいろ便利だったという事情ですが、その話は以前に下記のエントリに書いた通りです。
matsunart.hateblo.jp
あくまで個人的な事情でシネマライズから遠ざかったわけですが、しかし、それもまた世の中の「シネコン移行」の流れと符合していたのかもしれません。
ちょうど昨日は二子玉川の109シネマズで「バクモン。」を観ました。(今年7月から世田谷に引っ越したので、今では二子玉川の109シネマズが「最寄り映画館」となったわけです。)
かつて20代の頃は、シネマライズはじめ、シネクイント、ル・シネマ、ユーロスペース、シネカノンといったミニシアターに入り浸っていた自分でさえも、身近でネット予約などの環境が整ったシネコンにすっかりシフトしてしまいました。(これも時の流れなのでしょうか……)
渋谷は駅周辺を中心にこれから大規模な再開発が行われていきます。高層ビルが立ち並び、街並みも変わっていくのでしょう。
シネマライズの閉館もそうした流れの一つ象徴的な変化と捉えることができるかもしれません。
街が整備され、快適になっていくのとは裏腹に、街の個性が失われていってしまうかもしれない、、そんな危機感はやはり私も持ちます。
学生時代から今日まで、じつに沢山の時間を渋谷で過ごしてきました。
記憶のイメージは色褪せていくのは仕方ないのでしょうが、その記憶の面影を残す街の風景や大切な場所が失われていくのは、寂しいものですね。
シネマライズ最後の日まで、あと1ヶ月余り。。
最後の余韻を楽しみに、また近いうちに必ずスペイン坂を登って、映画を観に行きたいと思います。
以下、私がこれまでにシネマライズで出会った作品
1996
- シクロ Cyclo
- 天使の涙Fallen Angels Fallen Angels
1997
- ファーゴ FARGO
- トレインスポッティング Trainspotting
1999
2000
- オルフェ Orfeu
- ヴァージン・スーサイズ the Virgin Suicides
- ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ BUENA VISTA SOCIAL CLUB
2001
- チアーズ! Bring It On
- 王は踊る Le Roi Danse
- ディスタンス DISTANCE
2002
- ピンポン PING PONG
- 青い春 Blue Spring
- アメリ Le FABULEUX DESTIN D'AMELIE POULAIN
- リリイ・シュシュのすべて All About Lily Chou-Chou
2003
2004
- 恋の門 KOI NO MON
- ロスト・イン・トランスレーション Lost In Translation
2006
- ブロークン・フラワーズ BROKEN FLOWERS
2007
- 恋愛睡眠のすすめ THE SCIENCE OF SLEEP
2008
- 僕らのミライへ逆回転 Be Kind Rewind
2014
- her/世界でひとつの彼女 HER
2015
- バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)BIRDMAN or (The Unexpected Virtue of Ignorance)
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