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さよならホテルオークラ本館・「最後の男爵」が残した昭和モダニズムの傑作

ホテルオークラ本館の建て替えを前に今月いっぱいで本館は一時閉館となります。
個人的には2009年に同ホテルの新館で挙式、披露宴を行ったこともあり、格別な思い入れのあるホテルです。
本館には挙式、披露宴の際に宿泊させていただき、式に伴う記念撮影も本館の各所で行いました。(中でも本館ロビーで撮ったスナップは最高の一枚と思っています。)
それだけに今回の建て替えは非常に感慨深く、また名残惜しい気持ちを日々募らせています。

「最後の男爵」が残した傑作

ホテルオークラというと「帝国ホテル」「ホテルニューオータニ」と並び「御三家」と評され日本のホテルにおける最高峰として認知されています。
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ホテルオークラ閉館。1万8千坪の芸術はどう生まれ変わるのか - リクナビNEXTジャーナル

公職追放により帝国ホテルを離れた大倉は、日本国憲法の制定により、華族としての待遇も奪われる。しかし、国内屈指の工芸家たちへ日本の美を以って諸外国の貴賓を迎えるホテルの理念を熱心に説き、その協力を得てホテルオークラを開業させた。明治以降の日本に存在したであろう貴族の精神を証明するという野心と「最後の男爵」としての意地により、「帝国ホテルを超えるホテル」をコンセプトに設立されたホテルである。
出典:ホテルオークラ - Wikipedia

ホテルオークラ大倉財閥の二代目である大倉喜七郎によって昭和33年に設立されました。

  • 帝国ホテルを超えるホテル
  • 日本の工芸、建築の粋を極める
  • 最後の貴族としての誇り

まさに大倉喜七郎の意地と野心によって作り出された近代日本の傑出したホテルであり、建築だったのだと思います。

オークラ本館の建物

ホテルオークラ本館の設計、デザインは谷口吉郎や小坂秀雄ら多くの才能が集合し企画されました。

1962年竣工。設計:谷口吉郎(ロビー、オーキッドルームほか)、小坂秀雄(外観)ほか。世界に通用する日本独自のホテルを、という創業者・大倉喜七郎の思いの下、1962年に開業した〈ホテルオークラ東京〉。当時の日本における最高の建築、工芸技術を集約すべく、設計委員会(谷口吉郎、小坂秀雄、岩間旭、清水一、伊藤喜三郎)と意匠委員会(溝口三郎、繁岡鑒一、広井力、縣治朗、岩田清道)が設置されデザインされた。建物の構造としては、どの部屋からも景色が楽しめるよう、ホテルとして当時初となる「三ツ矢式建築」を採用。海外からも「日本モダニズムの傑作」と評価の高い本館ロビーは、設計委員会委員長を務めた谷口吉郎のデザインだ。73年には、谷口を中心とした設計チームにより別館が増築された。
出典:ホテルオークラ東京 | casabrutus.com

和瓦が貼り詰められた海鼠壁仕上げが特徴的な外観も好きですが、やはり谷口吉郎によるロビーのデザインの静謐がホテルオークラが日本を代表するホテルとしての気品を体現していると思います。
麻の葉紋、格子の窓から障子越しに差し込む穏やかな光の陰影。「オークラ・ランタン」と愛称される印象的な切子玉を模した照明。日本的な意匠を凝らした空間の静寂は和洋という概念を超えて結び付き、モダンな調和を空間に与えています。
和洋が完全に調和しているからこそ、一点の濁りもない気品がこのロビー全体に満ちているのだと思います。

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【東京の朝ごはん】ホテルオークラ東京 フレンチトースト - 東京で遊ぼう

Casa BRUTUS (カーサ・ブルータス) 2015年 01月号

Casa BRUTUS (カーサ・ブルータス) 2015年 01月号

建て替えを惜しむ声、反対運動

今回の建て替えにあたっては特に海外の著名人から建て替えに反対する声が挙りました。

casabrutus.com
www.sankei.com

いずれも影響力のある著名クリエイターがこの日本モダニズム建築の傑作を惜しみ、それぞれに声を挙げられました。
「傑作的な建築作品」として遺すべき、という観点ももちろんありますが、印象的なのはいずれも「オークラを愛し」「オークラの空間を守りたい」という気持ちを込めたメッセージである点。
優れた建築であると同時に「最高のホテル」として現在のオークラがいかに多くの人々に愛されているかを感じます。
たしかにオークラに行くと、そこかしこに老朽化を感じさせる部分もありますし、現代的なホテル空間と比べると手狭さを感じさせることもあります。
続々と外資系の高級ホテルが東京に進出し、競争が激化する中で「日本のホテルのトップ」としてのプレゼンスを維持するためには建て替えも止む無しという気もしますが、
それでも、やはり今のオークラの良さ、オークラらしさを失ってほしくはないと強く願います。
オークラ側も現在のオークラを踏襲すると表明していますし、なにより今回の設計に谷口吉郎さんの息子さんである谷口吉生さんが携わることは大いに期待できるのではないかと思っています。

谷口吉郎谷口吉生

  • 日本モダニズム建築の地平を切り開いてきた父
  • 現代におけるモダニズム建築を突き詰める息子

勝手ながら個人的にはそのようにこの2人の建築家をみています。
それぞれの時代や背景の違いがありながらも、2人は共通の地平を見ているような、そんな気がしているのです。
「現在のオークラ」への名残惜しさは尽きませんが、しかしそれと同時に谷口吉生が作り出す「新しいオークラ」に今は大きな期待も寄せています。

谷口吉生建築作品集

谷口吉生建築作品集

漂うモダニズム

漂うモダニズム

谷口吉郎 - Wikipedia

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/5/5c/National_Museum_of_Modern_Art%2C_Tokyo.jpg/1920px-National_Museum_of_Modern_Art%2C_Tokyo.jpg
東京国立近代美術館本館

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/b/b0/Toyokan_of_Tokyo_National_Museum.jpg
東京国立博物館東洋館


谷口吉生 - Wikipedia

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/8/8b/MoMa_NY_USA_1.jpg
ニューヨーク近代美術館新館

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/5/53/MIMOCA06s3s4592.jpg/1920px-MIMOCA06s3s4592.jpg
丸亀市猪熊弦一郎現代美術館