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仕事終わりにオペラ観劇……但し映画館で……

ライブっていいですよね。
私の場合、ライブというと主に演劇の公演になるわけですが、劇場の中で舞台上の世界と一体になる感覚は、生きるための活力となり、クリエイティブな感性に刺激を与えてくれる非常に貴重なものです。

できるだけ「これ」と思った公演には足を運ぼうと思っていますが、通常の演劇で7000〜8000円、オペラだと10000円以上、海外のオペラ公演だと20000〜30000円と相応にコストもかかりますし、人気の公演はチケットが取れないこともしばしばです。そもそも海外のオペラ座の公演などはそうそう東京に来るわけでもありませんし、気軽に楽しむには少しハードルの高い趣味とも言えます。

昨年はミラノのスカラ座、ロンドンのナショナルシアターと、現地で生の公演を観に行くことが出来ましたが、特にナショナルシアターの公演は素晴らしく、できることなら何度でも現地に行って観劇したいと真剣に思えるくらいの大きな感動がありました。
もちろんロンドンに行くには時間もコストもかかりますし、そんなに気軽に本場の舞台を観に行けるものではないですよね。。

そんな中、最近よく出かけるのが映画館での演劇やオペラの上映です。

前述のロンドン・ナショナルシアターの上映もありますし、オペラだとこちらもロンドンのロイヤルオペラや、ニューヨークのMET(メトロポリタンオペラハウス)は毎年のシーズンに合わせて全世界で上映されています。

今年に入ってから観に行ったタイトルを以下に挙げます。

ブラナー・シアター・ライブ

いずれもケネス・ブラナー演出による、シェイクスピアの「冬物語」「ロミオとジュリエット」、ジョン・オズボーンの「エンターテイナー」の3作品が上映されましたが、私はジュディ・デンチ出演の「冬物語」を観に行きました。
ケネス・ブラナージュディ・デンチの迫真の演技は言わずもがなの素晴らしさですが、個人的には舞台転換の妙(実に考えつくされた装置とすばやい転換は驚きでした)が印象に残った作品でした。

「英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン」公式サイト

ロンドンのロイヤルオペラハウスの2016/17シーズンは6本のオペラと6本のバレエの上映です。
その中で今回観に行ったのは、オッフェンバックのオペラ「ホフマン物語」とヴェルディのオペラ「イル・トロヴァトーレ」の2本。

圧倒的な美術と壮大な演出に酔った「ホフマン物語
昨年行ったロンドンはこの「ホフマン物語」の公演がスタートする直前で、今更ながら生で観れなかったのが本当に悔しい……(私よりも1週間長く滞在した妻はしっかりコヴェントガーデンで公演を観ていて羨ましいかぎり……)

イル・トロヴァトーレ」はアズチェーナを演じた、アニタ・ラチヴェリシュヴィリの傑出した演技が今でも鮮明に記憶に焼き付いています。個人的に「イル・トロヴァトーレ」という作品を今ひとつ理解できなかったのですが、今回のアニタ・ラチヴェリシュヴィリのアズチェーナによって、作品世界が一気に理解できたような気がします。アズチェーナの複雑な心情と運命が完璧に表現されていた凄まじい演技でした。


今シーズンはまだ観に行けていませんが、METのライブビューイングも気になります。
ダムラウ、グリゴーロ出演の「ロメオとジュリエット」を見逃してしまったのは不覚でしたが(この上映も妻はしっかり観に行っていて凄い)、6月のルネ・フレミング出演の「ばらの騎士」は見逃せません。
METライブビューイング:オペラ | 松竹

今年のラインナップはまだ公開されていませんが、ロンドン・ナショナルシアターのライブも楽しみです。
昨年のベネディクト・カンバーバッチ主演の「ハムレット」は衝撃でした。この「ハムレット」を観たからこそ、昨年のロンドン旅行では是が非でもナショナルシアターで生の公演を観たいと思ったのでした。
実際に現地で観たのは「アマデウス」でしたが、映画版とはまた違った鮮明な迫力とメッセージ性が強く印象に残っています。
昨年亡くなられた本作の作者ピーター・シェーファーの偉大さをあらためて実感した素晴らしいプロダクションでした。
www.ntlive.jp

世界屈指の舞台を映像上映とはいえ、劇場で楽しめるのはありがたいですね。
ロンドンやニューヨークに行かずともカジュアルに楽しめるのは大きな価値かと思います。
もちろん現地で生の公演を観る価値はかけがえのないものではありますが、こうした上映からも少なからず活力や刺激を得ることが出来ます。
仕事終わりにオペラ観劇。
日常のアクセントとして、これからも楽しみたいと思います。

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映画「バベットの晩餐会」の料理とワインについて

バベットの晩餐会とガーデンシネマ

昨年3月に4年ぶりに復活した恵比寿ガーデンシネマ
私にはなぜか縁のなかった映画館で、2011年の休館以前にも一度も行ったことがなかったですし、昨年3月の復活時もちょうど恵比寿から引っ越した直後ということで足が向くことはありませんでした。
そして今回、初めて行ったのです、恵比寿ガーデンシネマ

鑑賞したのは1987年制作のデンマーク映画バベットの晩餐会」。
mermaidfilms.co.jp

日本では1989年にシネセゾンの配給で公開されていて、今回はデジタルリマスター版の上映になります。
89年というと私はまだ13歳ですから中学1年生ですね……さすがに栃木の田舎でデンマーク映画に触れる機会などないですから、今回が初鑑賞になります。

作中の料理とワイン

映画の内容については諸氏のブログに任せるとして……
バベットの晩餐会に関するブログ記事まとめ

個人的には作中の料理やワインが気になるところ
ちなみに、作中の晩餐会のメニューについてはこちらの記事が詳しいです。
www.foodwatch.jp

「ウミガメのコンソメスープ」に始まり、メインは「ウズラとフォアグラのパイ詰め石棺風 黒トリュフのソース」とこちらも豪華なのですが、
それにも増してのワイン!
食前のアモンティリャードから、ヴーヴ・クリコ、クロ・ヴージョと続き、食後はフィーヌ・シャンパーニュ
1800年代後半のユトランド半島の辺境の村まで、よくぞ運んだ食材の数々とワイン。

どうやらこの晩餐で、主人公バベットは宝くじで当たった「1万フラン」の全てをこの晩餐に充ててしまったようですが、この「1万フラン」とはいかほどの価値なのか、、気になります……

作中の料理の価値

1800年にフランス革命政府が発行した40フラン金貨は12.9gだったそうな、それを元にすると現在金の価格は1g=2,700円程度ですから単純に計算、換算すると900万近くになりますね。

大好きな映画「バベットの晩餐会」(87年デンマーク映画)を観てふと思ったのです... - Yahoo!知恵袋
調べた方がいるんですね
この方によると900万円相当、と評価されてますが(この記事が2007年当時の金相場を元に試算されてるので)素直にそれを現在の金相場に当てはめると……なんと1500万円!
さすがにこの計算はおかしいということで別の記事をあたります

その金額1万フラン! 現在ならば20万フランだそうなので450万円ぐらいなのでしょうか。

おいしい映画 その3 バベットの晩餐会

特に明示されてないですが、おそらく現在のフランスの宝くじの当選金額を20万フランとして円換算してるようですね。
なるほど450万円……12人分の晩餐ということで、一人あたり38万円くらい

本作でバベット夫人がかつて料理長を努めていたと言う「カフェ・アングレ」ですが、現在の「ラ・トゥール・ダルジャン」の前身のお店だったようです
とーるブロ:ラ・トゥール・ダルジャン - livedoor Blog(ブログ)

東京にもホテルニューオータニ内に店舗がありますが、
Tour d'Argent Tokyo | トゥールダルジャン 東京 オフィシャルサイト
こちらはコースで32,000円なので、仮にヴーヴ・クリコ、クロ・ヴージョをそれぞれ頼んでも10万円にも届きそうにないですね。当時の「カフェ・アングレ」の料金はさすがに分からないですが一人あたり38万円というのはさすがに言い過ぎかと思うので、「カフェ・アングレの12人分のお代が1万フラン」はバベット夫人の方便だったのかもしれません。

ともかく、優しい映画で観終えた後の心地良さのある作品でした。
見終わった後はとにかく美味しいワインと美味しい料理が食べたくなる、そんな作品でもあります。
下の写真は「バベットの晩餐会」後に行きつけのスペインバルで飲んだアモンティリャードの様子です。

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バベットの晩餐会 HDニューマスター [DVD]

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シネマライズの記憶:スペイン坂の上で観た映画たちを振り返って

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シネマライズ閉館」というニュースは、個人的にあまりにも衝撃的でした。
ミニシアターブームを牽引し、渋谷カルチャーの一翼を担ってきた劇場がついに終焉を迎える。
特に20代前半の多くの時間を映画に費やし、渋谷をいわばホームとしてきた自分には本当にショックなニュースでした。

www.asahi.com

この機会にシネマライズの思い出を書き残そうと思い、シネマライズ オフィシャルサイト を頼りに、記憶を遡ってシネマライズで観た作品を全て書き出してみました。
書き出してみて、気づいたこと、思い出した記憶を幾つか挙げてみます。

トレインスポッティング」の鮮烈な記憶

1997年なので私が21歳。大学2年のときですね。
とにかく「トレインスポッティング」を見終えて、劇場の外に出たときの高揚感を今でも鮮明に覚えています。(別に作中のようにドラッグが……ってわけではなく)
渋谷の街を歩きながら、ずっと「Born Slippy」がループしていました。
ちなみにダニー・ボイル作品は「シャロウ・グレイブ」と「トレインスポッティング」の最初の2本は完全に好きな作品で、その後の作品は個人的にはあまり刺さりませんでした。(それでも「普通じゃない」「ザ・ビーチ」「スラムドッグ$ミリオネア」あたりは一応観てはいます。)

中越地震に遭遇した「恋の門

映画館で映画を観るのが好きで、足繁く劇場に通っていた20代ですが、その中でも特に記憶に残っているのが2004年の中越地震です。
恋の門」のたぶん中盤くらいだったかと思います。ちょうどシーン的にも盛り上がっているところで、揺れ始めの瞬間は何か起きたのか分からなかった記憶があります。
わりと作品に没頭していたせいかもしれませんが、地震という感じはしなくて、なんとなく映画の中の世界が揺れているような、そんな錯覚を感じたような気もします。
おそらく東京は震度4くらいの揺れだったかと思いますが、後にも先にも、映画を観てる間にあれほど揺れたことはなかったと思います。作品そのものよりも地震に遭遇した、ということが深く印象に残っています。

ソフィア・コッポラコーエン兄弟ミシェル・ゴンドリーなどなど

後述のとおり「ヴァージン・スーサイズ」を観たのもやはりシネマライズでした。
当時、東北新社にいた友人が初めて宣伝に携わったのが「ヴァージン・スーサイズ」で、その友人の勧めで出会ったのがソフィア・コッポラでした。
正直「ヴァージン・スーサイズ」に関しては、今でもいまいち理解しきれない作品です。(実は東北新社の友人もこの作品をどう捉えるべきか悩んでいるようでした)
その後「ロスト・イン・トランスレーション」に出会わなければソフィア・コッポラは私にとってただ"F・F・コッポラの娘"という位置付けに収まっていたかもしれません。
「監督」で観る作品を選ぶことの多い私ですが、シネマライズではこのソフィア・コッポラもそうですし、コーエン兄弟ミシェル・ゴンドリーといった大好きな監督と出会い、その作品と交流した貴重な場でもあったと思います。

2009年から2013年にかけての空白の5年間

これはあらためて振り返って気づいた点ですが、2008年の「僕らのミライへ逆回転」から2014年の「her/世界でひとつの彼女」までの実に5年間、私はシネマライズから遠ざかっていたのですね。
この間に何かあったのかといえば、2009年6月に結婚して、目黒に引っ越しのが大きかったのだと思います。
結婚してからも映画は引き続き観ていました。が、目黒に引っ越してからは専ら品川の「プリンスシネマ」で映画を観るのがほとんどで、渋谷で映画を観ることはほとんど無かったのですね。
品川プリンスシネマがいろいろ便利だったという事情ですが、その話は以前に下記のエントリに書いた通りです。
matsunart.hateblo.jp

あくまで個人的な事情でシネマライズから遠ざかったわけですが、しかし、それもまた世の中の「シネコン移行」の流れと符合していたのかもしれません。
ちょうど昨日は二子玉川の109シネマズで「バクモン。」を観ました。(今年7月から世田谷に引っ越したので、今では二子玉川の109シネマズが「最寄り映画館」となったわけです。)
かつて20代の頃は、シネマライズはじめ、シネクイント、ル・シネマ、ユーロスペースシネカノンといったミニシアターに入り浸っていた自分でさえも、身近でネット予約などの環境が整ったシネコンにすっかりシフトしてしまいました。(これも時の流れなのでしょうか……)

渋谷は駅周辺を中心にこれから大規模な再開発が行われていきます。高層ビルが立ち並び、街並みも変わっていくのでしょう。
シネマライズの閉館もそうした流れの一つ象徴的な変化と捉えることができるかもしれません。
街が整備され、快適になっていくのとは裏腹に、街の個性が失われていってしまうかもしれない、、そんな危機感はやはり私も持ちます。
学生時代から今日まで、じつに沢山の時間を渋谷で過ごしてきました。
記憶のイメージは色褪せていくのは仕方ないのでしょうが、その記憶の面影を残す街の風景や大切な場所が失われていくのは、寂しいものですね。

シネマライズ最後の日まで、あと1ヶ月余り。。
最後の余韻を楽しみに、また近いうちに必ずスペイン坂を登って、映画を観に行きたいと思います。


以下、私がこれまでにシネマライズで出会った作品

1996

  • シクロ Cyclo
  • 天使の涙Fallen Angels Fallen Angels

1997

1999

2000

2001

  • チアーズ! Bring It On
  • 王は踊る Le Roi Danse
  • ディスタンス DISTANCE

2002

2003

2004

2006

2007

2008

2014

2015


www.cinemarise.com


トレインスポッティング [Blu-ray]

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ロスト・イン・トランスレーション [DVD]

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恋愛睡眠のすすめ [DVD]

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「天才スピヴェット」「ビッグ・アイズ」…GWなので目黒シネマに籠ってみました

目黒シネマで2本立てを見ました。
ジャン=ピエール・ジュネ「天才スピヴェット」とティム・バートンビッグ・アイズ」の2本立て。
なかなかのチョイスですね、目黒シネマさん!

spivet.gaga.ne.jp
bigeyes.gaga.ne.jp

ビッグ・アイズ」についてはティム・バートンらしい雰囲気がなく、意外にごく普通の商業映画という趣き……こういう映画も撮るんですね、ティム・バートン
正直なところ、期待したものとは少し違っていて、物足りなさを感じてしまいました。

一方の「天才スピヴェット」!!
こちらは予想以上に「好み」の作品でした。
個人的な好みとしては「どストライク」な感じ

ノスタルジーを感じさせる世界観、弟を失った家族の空虚、それぞれが歪な家族それぞれのキャラクター
それだけでも充分な上に、なんとロードムービー要素まで盛り込まれてしまって、もう完璧な好みの作品でした

こういう映画観たのが久々な気がするので、観賞後もテンション上がってしまって、翌日はその勢いのまま「バードマン」を観に行ってしまったくらい……(そしてその「バードマン」も期待を裏切らない完璧な作品だったわけですが)

と、GWは映画を観ようと決めていたわけですが、とりあえず3本までは観ました
あと1〜2本観たい
何を観よう、、とりあえず「セッション」だろうか
昨日予告編を観た「The Trip to Italy」か

うーん、映画テンションが久々に高まっている今日この頃でした

www.youtube.com
www.youtube.com

session.gaga.ne.jp
www.crest-inter.co.jp