art × social × blog

日常のこと、スポーツやアートのこと、仕事のこと

二条城でオペラ「蝶々夫人」

世界遺産でライブっていうと今年世界遺産登録された富岡製糸場だったり、意外にあちこちでいろんな団体やアーティストがイベントをやってるんですね

ちょっと検索しただけでもいろいろ出てきます。

そんな中で今回紹介するのは「世界遺産でオペラ」という趣向。
9月21日(日)に京都二条城で催されるオペラ「蝶々夫人」の公演を観に行けることになったので、その紹介とオペラ「蝶々夫人」について少し書きたいと思います。

http://www.kyoto-opera-festival.com/

今回は二条城の二ノ丸御殿中庭、野外でのオペラ公演になります。
演目はブッチーニの代表作の一つ「蝶々夫人」。
指揮者はイタリア・ボローニャで活躍されている吉田裕史さん。
この吉田さんが以前に指揮をされたオペラに私の妻も出演していたことがあり、今回の公演のことを知ったわけです。

このオペラ企画、昨年は同じく京都の世界遺産清水寺で「ドン・キホーテ」を上演しており、
今回はその第二弾ということになります。


マルティーニ作曲「音楽の先生」「ドン・キホーテ」 Kyoto Opera Festival at Kiyomizu, Martini Intermezzi - YouTube

昨年の公演も話題となったようですが、今回も「蝶々夫人」という演目を京都で上演するという点も個人的には面白い企画だなぁと思っています。

そもそも「蝶々夫人」ってどんな作品なのかってことを簡単に説明します。
あらすじはこんな感じ。

  • 長崎の大村という港町を舞台とした話
  • 没落士族の娘で身寄りのない15歳の芸者蝶々さん
  • 蝶々さんはアメリカの海軍士官ピンカートンにおよそ100万円で身請けされます
    • いわゆる現地妻って感じですね
  • 純粋な蝶々さんはそんなことは知らずにピンカートンに尽くします
  • でもピンカートンは任期が終わると当然ながらアメリカに帰ります
    • もちろん蝶々さんは日本に置いて……
    • ピンカートンと蝶々さんの間には男の子も産まれています
    • それでも構わずヤンキーは母国へ帰ってしまいます
  • それから3年が経ち、ピンカートンは再び日本を訪れます
    • ピンカートンはどうせ蝶々さんは別の男性と再婚でもしているだろうと鷹をくくっています
    • でも実際には蝶々さんはずっとピンカートンを待っていたのでした
  • そのことを知ったピンカートンはビビって逃げてしまいます(とんだヘタレヤンキーです)
  • 意外なのはピンカートンの正妻ケイトの行動
    • なんと蝶々さんとピンカートンの息子を自分が引き取るとか言い出します
  • 蝶々さんはその申し出を受け入れるのですが、信じていたピンカートンに裏切られて絶望します
  • 絶望した蝶々さんは士族の誇りを胸に自害して果てます

以上がオペラの現行版のあらすじです(これがまた初演版だったりするといろいろ話が変わってきます)

要するに「ヤンキーに買われて弄ばれた長崎の少女の悲劇」というのが「蝶々夫人」のざっくりストーリーとなります。(本当に酷い話だ……)

有名なオペラだし、人気もあります、名作だと思うし、アリア「ある晴れた日に」は本当に名曲だと思います。
が、しかし、本当に日本人の立場から見ると最低の話だし、このオペラで感動することには日本人としてためらいを感じます。
実際に明治期にはこんな話っていろいろあったんだろうなぁと想像も出来るし、それを考えれば尚更、この作品のことを手放しに評価するのは日本人として抵抗を感じるわけです。

この作品、実は個人的には実に思い入れのある作品です。
というのも大学時代に唯一私が演出を任されたのがこのオペラ「蝶々夫人」でした。
演出を引き受けた経緯はいろいろあったわけですが、最終的な動機としては

  • 日本人である自分たちが日本人の立場を持って「蝶々夫人」を表現することの意義
  • 大学生という若い自分たちが等身大に近い蝶々さんを表現したい

という2点が大きかったと記憶しています。

特に海外での「蝶々夫人」の公演はいわゆる「間違った日本」が演出されていることが多く、それだけで日本人としては見るのが辛い公演が多いという印象がありました。
それに(これは仕方のないことですが)15歳の少女を40代50代のソプラノが演じるのはやはり表現として適切ではないと感じており、歌い手の力量的に相応のキャリアが不可欠という観点は理解しつつ、それでもやはり蝶々さんの悲劇は等身大のキャストが演じてこそ、という部分もあると考えていました。

そんな思い入れのある「蝶々夫人」を二条城という特別なシチュエーションで観れるというのは二度とない体験で、今から公演が楽しみです。
野外の公演なのでどうか天候だけは無事であるよう心から祈っています。